Love Game[完結] | ナノ

二方向


体育館に戻って来た二人。
自主練を行っている部員が数人いる中、珍しく研磨の姿もそこにはあった。


「夜久先輩。」


不安そうに声をかけた時穏に笑みを向けた夜久。
「帰るか。」と一言、声をかけた。



黒尾は研磨の姿を見て「自主練か?雪でも降るんじゃねぇか?」と天井を仰ぎ見る。
研磨は練習をする犬岡とリエーフの姿を見ながら


「時穏に、告白しても大丈夫そうだよ。」


とだけ言う。
黒尾は眉間に皺を寄せて「時穏に聞いたのか?」と首を傾げる。


「…聞いたというより…例え話にした。“揺らぐことはない”って言ってた。」

「まぁ…ポジティブに考えれば、付き合いたてだしな…でも、言い訳したくねぇしな。」


黒尾は大きくため息をつくと口角を少し上げた。


「夜久には言ったぞ。まぁ、ハッキリとは言ってねぇけどそれとなくな。」


研磨は顔を上げて黒尾を見た。


「…振った理由、アレ、嘘だってこと?」

「そー。」

「…そっか。」


研磨の隣に腰を落とした黒尾。
リエーフのサーブがネットにかかり中々ゲームが始まらない様子を見てふっと笑う。


「…クロが、時穏を振った理由に今更とやかく言うつもりないけど…」

「おー…言いたいことがあるなら言え。」


真っすぐ前を向いている黒尾の横顔を見ながら口を開く研磨。


「好きなくせに、良い人ぶったの?」


黒尾は「いい人ぶったんじゃないんです。」と研磨を横目で見る。


「俺はこういう人なんです〜!」

「確かに、そういうことしそうだけど…」

「しそうじゃねぇよ。したんだ。だから、する人なんだよ。」


満足のしない顔をしている研磨に黒尾は真面目な声色で「お前だって、そうすると俺は思うぞ。」と言う。


「…負けの見えてるゲームなら、もっと強くしてから挑むけど…。」

「ほらな。俺もそれだ。」


研磨の頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でた黒尾は、そのまま立ち上がりリエーフたちの元へ歩み寄って行った。


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