Love Game[完結] | ナノ

彼女の心中


女子生徒二人を見て黒尾が「イジメか?」とわざとらしくニヤニヤする。
時穏は慌ててそれに否定をした。


「違います違います!前、夜久先輩に告白した子で…」

「夜久か…アイツほんとモテるな。」


俺じゃないのが残念だが…冗談はさておき、と腕を組む黒尾に時穏は身を小さくした。


「何処にいるかくらい誰かに伝えてから行け。」

「う…」

「心配すんだろ。」


彼のその言葉に深い意味は無い。
分かってる。


「…黒尾先輩?」


でも、本気で言ってることも分かった。

チラッと時穏の背後にいる女子生徒に視線を向ける黒尾。


「…君、夜久のこと好きなの?」

「黒尾先輩って…」


目の前に立ちはだかる黒尾を見上げて固まるその子。
隣にいた友達が「バレー部の主将の…?」と問いかけた。

ニッコリ、張り付けた笑みを見せる黒尾。


「やっくんばっか見てると、世界狭くなるぞ〜?」

「お前、俺のいないところで何言ってんだよ。」


チラッと視線をそちらへ向けた黒尾。


「早かったな。」

「…あのな…」


呆れた顔を向けながら時穏の姿を見てホッとする夜久。


「研磨が、お前がヤバい感じがするって時穏探しに行ったって言うから来てみれば…」

「夜久は来るだろーなと思ってたぜ。」


女子生徒は「夜久先輩…」と固まっている。
その二人を見て黒尾を睨んだ夜久。


「お前の早とちりかよ!大袈裟なんだよ!」

「悪かったって。勘が当たらなかっただけだろ〜?」


ジロッと睨む夜久に抑えて抑えてと両手を上げる。


「部活始まっから!さっさと行くぞっ時穏もな。」

「はい…」


二人を背に、女子生徒二人に夜久が「時穏と友達か何か?」と問いかける。
「いえ、」と答えるだけで精いっぱいなその子に夜久は


「聞きたいことがあるなら、俺に聞いて。」


と真っすぐ二人を見る。
夜久を好きな彼女が「夜久先輩、彼女ができたって聞いたんです。それを確かめたくて、マネージャーさんに。」と正直に話した。


「時穏、何か言ってた?」

「いえ、とくには…」

「じゃあ、何か言った?」

「…あ…夜久先輩に好きな人がいるって聞いたとは言いました。」

「…そう。」


夜久は難しい顔をした後、一つため息をついた。


「ダメでしたか…」

「いや…」


少し考えた後、夜久は彼女に「とりあえず!俺のことは俺に聞いてくれ。」とだけ言った。


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