ヤバイ感じがする
「おい、時穏ー。アレ?あいつどこいった?」
体育館、黒尾がマネージャーの姿を探している様子を見た犬岡が「時穏さんなら、さっき誰かに呼び出されてどこかへ行きました!」と答える。
黒尾は「呼び出し?」と眉間に皺を寄せた。
「アイツも傍から見りゃ可愛いからな…」
なんて、まるで他人の見方をしているかのような言い方をする黒尾に、研磨が何を言っているんだ、という顔をしながらその背に向かって言った。
「クロから見ても可愛いくせに。」
研磨を見た黒尾は苦笑いをして「研磨から見た時穏はどーよ?」と聞く。
聞かれた本人は「時穏の良さは一生わからないと思ってる。」と言った。
「…俺をバカにしてるのか?」
「…ウチには時穏を好きな人が二人いるからね。わからない方が、安全。」
「ホントにそう思って言ってないだろ。」
幼なじみの言い合いが繰り広げられているところに彼氏が現れた。
「言い合いしてねぇで中入れば?」
しっかりしている彼の背を見つめて研磨は思った。
「夜久くんとクロなら、おれ、絶対夜久くんと付き合う。クロうるさいし。」
「最後の一言いりますか?」
時計を見て部活まで時間があることがわかる。
まさかとは思うが…。
チラッと夜久を見る黒尾。
本人は海と何やら話している、普段通りだ。
「研磨。」
そばにいた研磨に声をかけ、その場を離れた。
「なぁ、海。時穏見てねぇ?」
「そいや、きょうはまだ見てないな…」
不思議に思ったのか夜久が当たりを見渡す。
「研磨、黒尾は?」
体育館の端で座っている研磨に声をかける。
研磨は顔を上げ「クロなら…時穏探しに行った。」と体育館の外を指さす。
「なんか、ヤバイ感じがするって言ってた。」
「ヤバイ感じ?」
眉を顰め、首を傾げる夜久。
ヤバイ感じって…なんだ?
考えても考えても出てこない。
何がやばい…?
「海。」
「ん?」
[ 64 / 80 ]
prev | list | next
しおりを挟む