Love Game[完結] | ナノ

そういえば…


レシーブ練が始まり、声をかける。


「5本成功です。」

「じゃあ次、リエーフ。」

「ウィッス!」


自己主張素晴らしく、そしてその後のレシーブも…さぞ素晴らしいことなのだろうなぁと先輩たちが見守る中、リエーフは「お願いします!」と叫ぶ。


返事だけはまともなんだけど…とボールを手渡す時穏の心の声がリエーフに聞こえたのだろうか。


「あっ!」

「!!」


時穏の目の前にリエーフの腕に当たったボールが飛んできた。
しかし、ネットの奥にいるためネットにかかり虚しくボールは落ちる。

ビックリした…反射的に目瞑っちゃったよ。
もう何も言わない、ごめんねリエーフ。

と心の中で謝罪しながらコーチにボールを手渡す。


「どーですか!やればできるんです俺!」

「はよ代われ、お前は。先輩たちがまだ残ってんだぞ。」

「あ、すみませ…」


リエーフの背後で黒尾が怒りを堪えている様子が見受けられ、山本が慌てて引き下がらせた。


「シァッス。」


黒尾の声と同時にレシーブ練が開始される。
黒尾のレシーブはリエーフとはやはり違う。
しっかりセッターのいる位置に返されている。


やっぱり、黒尾先輩上手いなぁ…。


「次!」


あ、夜久先輩だ。
夜久先輩は、いつ見ても惚れ惚れするものがある。
夜久の行うレシーブはすべて綺麗に時穏の目の前のネット際を落ちていく。


ホント…誰かのネットにかかって虚しく落ちてたレシーブと比べ物にならないくらい…上手い。

リエーフをジッと見つめる時穏はため息をついた。


「おい、時穏。今リエーフと比べたな?」

「はい!え?そんな!」

「嘘つき。」

「う…」


研磨がいつの間にか隣に来てボールを一つ手に取っていた。


たまに、研磨は味方なのか、敵なのかわからない立場になるときがあるため、常に信用している時穏にとって悲しくなる瞬間とは、こういう時なのだ。


「研磨のばかー」

「バカは時穏。嘘つかなきゃいい話でしょ。」

「ごもっとも〜」

「うぅ…」


黒尾先輩が加われば、部員たちに苦笑いを向けられる。
ボールの籠を引いて時穏はコートから出た。

コートを出てから振り返り見れば、夜久の背中に自然と目が行く。


コートの外に出ると、部員たちが別人に見えてしまう。
いつも、距離を感じる。

まぁ、仕方ないことなんだろうけど…。
でも…


ゲーム形式で行われているそのコートを見つめながら時穏は思った。


そういえば、夜久先輩って…私のどこを好きになってくれたんだろう。


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