Love Game[完結] | ナノ

お花畑


昨夜のことを思い出し、頬を緩ませる時穏。
研磨は再び「脳内お花畑」と呟く。





「夜久先輩が好きです。」


その、告白のあと、夜久は「時穏。」と彼女の名前を呼ぶ。
視線を挙げた先の夜久は、両手を広げて恥ずかしそうに顔を背ける。


「…来いよ。」

「え?」

「取りあえず来い。」


夜で閑静な住宅街には人があまり通らない。
今ならいいか、と時穏も彼に近づき、抱きつく。

ギューッと抱きしめれば、いつもと少し違う抱き心地と、夜久の胸の音。

でも、同じなのは夜久の香り。


「ハァ…やっと…」

「…え?」


聞き返す時穏に、夜久は「待ってた、時穏が俺のこと好きになるまで。」と言う。

言われた時穏は驚いた。


「えっい、い、いつから?」


身を少し離し、夜久を見る時穏。
柔らかく笑みを浮かべれば夜久は時穏をぎゅっと抱きしめた。


「それはまた今度な。」

「えぇ…教えてください。」

「やだよ。」


そっと腕から解放すれば目の前の彼女はムスッとしていた。
思わず笑みが零れる。


「時穏、」

「…。」


ふいっと顔を背ける拗ねた彼女。


「俺と、付き合ってくれる?」


その言葉に目を少し開いた彼女はすぐ夜久を見て「はいっ」と言う。

そして、あ…と固まる時穏に笑う夜久。


「ホント可愛いよなぁ」

「っ…きょう、多いです。ソレ。」


「夜久先輩から言われたことなかったからなんて返せばいいのかわからない…」と。
え?そうだっけ?と首を傾げる夜久。


「今に始まったことじゃねぇけど…いつでも可愛いなって思ってるよ?俺。」

「っ…!そ、そういうのはっい、妹みたいなかんじじゃないんですか?」

「そんなわけねぇーよ。」


夜久を真っ直ぐ見上げる時穏。


「ちゃんと女の子として見てるけど?」

「…。」

「っつか、榎本の妹って言われる前にもう好きだったからかもなぁー」

「…え?」


赤い頬のまま時穏は夜久の言葉に反応し、顔を上げる。


「なぁ時穏。」

「?はい…」


夜久は首を傾げた彼女を見て少し口角を上げる。


「大好きだよ。」


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