Love Game[完結] | ナノ

夢か幻か


あれ…。


むくりと起き上がる時穏。
しばらくボーっとして辺りを見渡す。

テレビは消されており、リビングの電気は付けられたまま。
しかし外は暗い。
時間が経過していることを物語っていた。


タオルケットを見て兄のものだとわかった時穏は何かを思い出したようにハッとする。


これは結兄のもの、ということは…夜久先輩とのサッカーが終わって帰って来たってことだよね。
部屋にいるかな?
話し聞きに行こう。


そう思い、タオルケットを手に二階へ上がる。
自室の隣の部屋の扉をノックする。

向こうから「時穏?」と兄の声が返ってくる。
「うん。」と返せば「入っていいぞ。」と言われたため久しぶりに入る兄の部屋の扉を開けた。


まず目に飛び込んできた光景に目を見開く。


「え…」


来客、夜久の姿だ。
夢でも見ているんじゃないかと目を擦る時穏に結葵が笑う。

やはり、夢でも幻でもなく、家に夜久先輩がいる現実がそこにはあった。


「…夜久先輩?」

「…おはよ。時穏。」


私服だからだろうか、いつもと雰囲気の違う彼に少々戸惑う。
柔らかい笑みを向けてくれる夜久。

胸が掴まれるような感覚がした。


「おはよ…ございます…?」


夜久は時穏の姿を見て「じゃー俺そろそろ帰るな。」と結葵に言う。


「おー、今日サンキューな。」

「たまたま部活休みだったからだぞ?」

「…時穏。」


結葵に声をかけられ視線を向ければ手からタオルケットが取られる。


「夜久の見送り頼んだぜ?」

「え。」


視線を夜久へ移した時穏。
ばっちり目が合い、視線をすぐ落とした。


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