原因…
「う〜」
「時穏、食べないの?」
「食欲がない。」
お昼休み、友達といるよりなぜか研磨のところにいたくて珍しく研磨とご飯を並べる。
時穏の様子を見て心配そうに「体調悪いの?」と問いかける研磨。
「うーん…朝は食べれた。」
「って言っても、そんなに食べてないんでしょ。」
「バレた…」
ボーっと窓の外を見つめる時穏の視線の先に、入って来た姿。
目を少し見開いた彼女に気付いた研磨がその視線の先を見る。
「…クロは、相変わらずモテるね。」
二人が見ていたのは黒尾が女子に囲まれているところ。
「…黒尾先輩って、好きな人いるのかな?」
「…なんで?」
「ん〜…それで振られたんなら、べつにいいかなって。」
研磨は黒尾から振った理由を聞いていないことをこの時知り、口を閉じた。
「黒尾先輩と付き合う人ってどんな人なのかなぁ…」
「…そんなに期待できる人じゃないと思うけど。」
「なっそんな酷いこという子だったっけ?」
「口が悪くなったね。」と言う時穏に研磨は「それより…」と目の前のお弁当の包みを開く。
「食べなよ。」
「うぅ…いらない。」
「…じゃあ、食べさせてあげようか?」
「…え?」
研磨のその言葉を聞いた時穏は身に危険を感じ「食べます!」っとお箸を手にした。
「夜久くん…」
「!!な、なに?」
過剰にその名前に反応した時穏を見て研磨は視線を落とす。
「最近、抱き着いてるとこみないな、と思って。何で?」
「ちょっとは遠慮というものを持ってよ〜」
「時穏に関しては…無理。」
「無理じゃなくて、可能ですと言って。」
ご飯をちょっとずつ食べる彼女の様子を見ながら研磨は「その食欲の原因には、夜久くんが関係してる。」とどこかの占い師のような口調で言って退けた。
「…金髪にそれは似合うね。」
「話をそらさないでくれる?」
「ごめん…」
なかなか話そうとしない彼女に、研磨はすでに察していた。
「もう、好きなんでしょ?」
「…好きって…なに?」
「…夜久くん。」
「…。」
頬をほんのり赤くする時穏に、研磨は「別に、いいじゃん。」と言う。
「なんでそんな頑なに隠そうとするの?」
「だって…簡単な奴、とか、思わない?」
「どこが…むしろやっとの間違い。」
研磨の言葉に首を傾げる時穏。
「夜久くんに、言えば?」
「またそうやって適当なこと言う…!言えるわけないじゃん…特に今回は!」
「何で?」
今度は研磨が首を傾げた。
「…だって…次振られたらもうバレー部にいれない…」
「早いね。振られた後のことまで考えてるなんて。」
「そりゃ、好きになったら考えるでしょ?」
そう言った瞬間口に手を当てる時穏。
「…もう遅いよ。」
「う…。」
[ 46 / 80 ]
prev | list | next
しおりを挟む