Love Game[完結] | ナノ

様子が変


「あ…」


部活前、夜久の背を見つめる時穏。
この前の“告白は断りました”という結果を聞いた日から、どこか時穏の中で夜久に距離を取っていた。


「時穏、最近変だな。」

「っ…」


ギクッとした。
休憩中、黒尾にタオルを手渡した時だった。

研磨がその隣で「クロのせいだと思う。」と呟く。
それを聞いた黒尾は「それは否めませんな。」と苦笑いをする。


「いや…俺のせいなら…うーん、そうだな…せめて笑ってくれるとありがたい、んだけど…」

「無茶だよソレ。」

「お前ちょっと黙ってろ。」


研磨に口止めをする黒尾を見て、時穏はふわっと笑う。


「黒尾先輩のせいじゃないですよ。」

「…ならいいんだけど…ここずっと元気ねぇだろ。」


心配そうに時穏を見る黒尾。
彼女は「あ、研磨が言ってたのはこういうことかもしれない。」と思った。


例え好きじゃなくても、一定の距離で見守ることが出来る人。


「大丈夫です。ありがとうございます。」


それだけ言うと、その場をそそくさと立ち去った時穏。


黒尾先輩の、ああいうところに惹かれたところもある。
誰も特別視しないで、男女の線引きもしない。
部員全員の様子をどこかで見てる。


主将らしいところだ。


…離れないと、この気持ちって消えないのかな。
じゃあ部活にいたら、ずっとこんな感じなのかな。


…アレ、私、なんでずっとモヤモヤしてたんだっけ?
黒尾先輩に?いや、それは違うかったはず…

じゃあ誰に?


「時穏。」

「あ、はい。」


夜久の声に振り返る時穏。
その目を見て、パッと無意識に目を逸らす。


…ん?


ちょっと待って、今のあからさまに視線逸らし―…


「コレ。また作っといて。」

「あ、はい。」


夜久は何も言わず、空になったボトルを手渡すと彼女から離れていった。


…何だろ、この気持ち…
寂しい…感じがする。


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