Love Game[完結] | ナノ

結果


部活を終え、自主練習が始まった。
リエーフのレシーブの練習に付き添っている夜久。
黒尾は嫌そうな顔をした研磨に「練習付き合え。」とコートへ入れている。


時穏は練習を始める部員たちを見てドリンクを作ろうと籠にドリンクを入れていく。


「ちょっと休憩させてください!!もう無理ですっ」

「無理言うなっ…じゃあ、5分な。」

「!!あざっす!」


リエーフがボトル目がけて駆け寄ってくる。
夜久が彼女の姿を見て「時穏はまだ帰らないの?」と問いかける。


「はい…帰っても結兄うるさいだけだし…」と遠い目をする時穏。
その話を聞いて思い出したように夜久が「そういえば、」と話をする。


「榎本、きょう告られてたぞ。」

「またですか?アレのどこがいいのか…」


時穏!っと言って笑う兄の顔を思い浮かべながら苦笑いをする彼女に、夜久は「でもすぐ振ってたけどな。」と複雑そうに笑う。


「昔からそうなんですよ…ラブレターも、私がもらって帰ってきたら“直接渡せって言えっ”て怒られて…」

「そういうとこあるよな、榎本って。」


「まぁ、直接渡すことにだって大切なとこあるしな。」と言った夜久に、時穏は首を傾げた。


「それは…どういう?」

「好きな人前にすると緊張するだろ?」


そう問いかけられ黒尾の前だとやけに緊張することを思い出した時穏は「はい。」と頷く。
夜久は時穏から視線を移し、片方のコートで黒尾たちが練習する光景を見ながら話す。


「それを乗り越えて気持ち伝えるのってかなり勇気いると思うんだよ。振られるかもしれないしな…そういうとこ見て、“あ、この子いいかも”って思うときがあるんだよ。」

「…へぇ…。」


結兄も、ちゃんと考えて言ってたんだな、と思う時穏。


「時穏もな。」

「え?」


隣にいる夜久に視線を向ければ、柔らかく笑う夜久を見て、言葉を失う。


「ちゃんと黒尾に言っただろ?だから振ったって聞いた時は悔しかったけどな。」


夜久の言葉を、あまり深く考えずに聞いていた時穏はへらりと笑う。


「おい、ちゃんと聞いてんのか?」

「き、聞いてますよ。」

「嘘つくなよー」

「すみません…」

「正直だなっ」


笑う夜久に「あの。」と時穏が口を開く。
「ん?」と視線を向けた夜久に、彼女は目を瞑り意を決したように問いかけた。


「あの手紙…どうしたんですか?」


しばしの沈黙が二人の間に広がる。
時穏がそろりと目を開けると、頭上に手が乗せられたのがわかった。


「可愛いなぁ〜時穏は。」

「結兄のマネしないでください。」


ふざける夜久にムスっとした顔を向けた時穏。
その顔を見た夜久は「ちょっとは俺のこと考えてたみたいだな。」と口角を上げる。


「え?」


きょとんとする時穏。


「断ったよ。時穏の面倒見るだけで手いっぱいだしなぁ。」

「なっ…それはリエーフの間違いじゃないですか?」


ボールを持っているリエーフを指さすとリエーフは「え?!なんすか?!」と身を引く。
夜久はその言葉に笑うと「どっちもどっちだな。」とコートへ向かう。


その背を見つめながら時穏は胸元を押さえた。


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