バカと賢い
「意味…かぁ。」
「…何?」
研磨の教室に訪れている時穏。
すでに彼女は2年3組の生徒と化していた。
夜久に言われた言葉を考えているが、よく分からないままでずっとモヤモヤしている時穏。
夜久に聞いても「それは自分で考えなきゃダメ」と言われて終わってしまった。
「研磨は賢いから意味わかるかも!」
「…時穏は賢くないから意味わからないんだね。」
「そう。研磨と真逆なんだよね…」
あぁ、だから黒尾先輩にフラれたのかも。
なんて少し考えたが、口にはせず、それより夜久先輩の言葉が気になる時穏。
「あのね、この前夜久先輩に、黒尾先輩に振られたことには意味がある。って言われたんだけど…どういう意味かわかる?」
時穏が首を傾げ研磨を見る。
研磨は指を動かしながらゲームを行っている頭で考えた。
「そのまんまの意味。」
「だからそれがわからないから教えてってばー」
項垂れる時穏に、研磨は眉間に皺を寄せて「ホントばか。」と言う。
「クロに振られたことによって、これから時穏に起こることが、良いことかもしれない。」
「?」
「もし、時穏が誰かを好きになって、両想いにならたら…幸せでしょ?でもそれは、クロが振らなかったら、時穏の持ち時間で味わうことのできない時間になる。」
わかった?と相変わらず難しい顔をしている研磨に、目をパチパチすると「研磨、天才だね。」と大袈裟に褒めた。
「そういえば、夜久くん。告白されてたね。」
「あー、ラブレターでしょ?」
「ううん、部活前。」
研磨の話に、動きを止めた時穏。
「え?待って、いつの話?」
「3日くらい前だけど…知らなかったの?」
1週間で2人に告白されるってどゆこと?
モテ期なのかな…先輩にモテ期…。
「時穏?」
「…夜久先輩、どっちかと付き合うのかな…」
しゅんと落ち込んだ様子を見せる彼女に研磨は「わからないけど…夜久くんに彼女いない方が不思議。」と答えた研磨に項垂れる。
「だよね…」
「…時穏。」
「ん?」
「夜久くんに彼女できたら、嬉しい?」
「…。」
研磨の質問に、口を詰むんだ時穏。
「抱きつけない…」
「抱きつける抱きつけない以前の問題だと思うけど…。」
「はい?」
「今、時穏の近くにいるのは、誰?」
…なんか、前にもそんな話したよね。
研磨のことだと思ったら、違った。
前は…
「夜久先輩?」
「そこまでばかじゃなくて良かった。その存在、無くなるんだよ。時穏を見てくれる夜久くんがいなくなる。」
「夜久先輩には、好きな人ができたから?」と問いかける時穏に、研磨は「もう、居るかもしれないけどね。器用なのかも。」とよく分からないことを言う。
「…研磨さ、賢すぎて話がわからない時がある。」
「時穏がもっと、言葉の意味を考えれば良い。そう思って言ってる。」
ムスッとする時穏を見て、視線をゲーム画面へ戻す研磨。
器用なのかも…器用…。
[ 42 / 80 ]
prev | list | next
しおりを挟む