Love Game[完結] | ナノ

意味


「あ、夜久先輩…それ…」

「俺宛て…ラブレターか?」

「…悪いことしちゃいましたか?」


夜久は裏表を見てから、時穏へ視線を向ける。


結葵が小さい頃からモテモテだった。
手紙を渡せと言われることもよくあった。

でもそれを持って帰るたびに結葵は怒る。

貰ってくるな!直接渡せって言え!

と。


「いや…ありがとな。」


でも、彼は違った。
怒る様子もなく、無邪気に笑う。


やっぱり、夜久先輩は優しい。


「…モテモテですね先輩。」

「…うーん、まぁ表面上でモテてもなぁ。」


あまり嬉しそうではない夜久を見て、思い出したことがあった。


「あ、あの…遠征の帰り…結兄が夜久先輩に連絡したって聞いたんですけど…」


「あー、ほんの数分帰りが遅かっただけで電話してきたヤツな。」と思い出し苦笑いする夜久。


「あそこまでなると、あのシスコンどーにかした方がいいと思うぞ。」

「…はい…。」

「…時穏?」


少し元気のない様子を見せる彼女に歩みを止めた夜久。
時穏は意を決したように視線を上げる。


「ご迷惑をおかけして、すみませんでした。」

「…。」


頭を下げて、謝る時穏。

夜久は知っている。
あの日、彼女の帰る時間が遅くなった理由を。

でも、彼女は夜久が知っていることをまだ知らない。


夜久は「時穏。」と名前を呼ぶ。
顔を上げた彼女に「知ってるか?」と話す。


「出来事には、意味があるんだぞ。」

「…意味?」

「そう。こうして時穏と俺がすでに部活が始まってる時間に話してることにだって、意味があるんだよ。」


首を傾げる時穏に、夜久は「うーん、じゃあハッキリ言うけど…」と腰に両手を当てた。


「黒尾のどこがそんなに好きだったわけ?」


夜久の問いかけに、目を見開いた時穏。


「…先輩、知ってたんですか?」

「そりゃさ…わかるだろ?黒尾から聞いたわけじゃねぇからどうやってアイツが言ったのかは知らねぇけど…。」


「榎本と黒尾の雰囲気最悪だったからな。」と遠い目をしながら話す夜久。

時穏は「同じクラスですもんね…」と視線を落とす。


「…だからさ、黒尾が断ったことにも、断られたことにも、意味がある。」


「意味…」と考えた時穏と、その姿を見ていた夜久の間にサッカー部のボールが転がって来た。

ばたばたと駆け寄って来たサッカー部を見て、ハッとする時穏。


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