逆効果
「ねぇ、結兄。」
「ん?」
いつもの如く、部活から帰って来た時穏。
結葵もいつものようにソファーに寝転がって雑誌を読んでいた。
視線をチラッと彼女へ向ければ、様子を伺う。
黒尾にフラれてからというもの、元気を無くしていた時穏だがここ最近、変わったところがある。
「魅力を磨くにはどーしたらいーんですか?」
俺と、向き合って話すようになったこと。
ソファーの背もたれに両腕をついて上から見下ろす時穏に固まる。
「…何。好きな奴でもできた?」
真剣な顔をして真っすぐ時穏の顔を見つめる結葵の視界からフッといなくなる。
身を起こせば、冷蔵庫を開けて水を手にした時穏の背中を見た。
踵を返し、兄に向き直った時穏が息を吸った。
「…絶対後悔させてやるー!!」
「え。」
「カッコいい彼氏つくってやる!!!」
そう叫び終えると、ペットボトルに入った水をゴクゴクと喉に流し込む時穏。
結葵はへぇ〜と感心した。
まさか黒尾が振った事によって、時穏の良い影響になるとはねぇ…。
黒尾に御礼を言うべきか、時穏にお前は強いな、と褒めるべきか…。
「まぁ、いー傾向じゃないっすか。」
と時穏に微笑んだ。
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