兄の友達
15対13と音駒高校がリードしている中、相手高校がタイムを取った。
あの変な髪形の人カッコいい…。なんてくだらないことを考えていたらその人にばかり視線は行ってしまう。
ずっと見ていたら兄の友達のうちの1人が後ろを向いて『妹ちゃん、いくつ?』と声をかけられた。
「14です。」
『14ってことは…中学3年か?』
「はい。」
頷くと『じゃあ高校はうち(音駒)来るのか?』とわくわくした面持ちで問いかけられる。
まだ決まっていないため、言葉に詰まっていると隣の兄が「まだ悩んでるんだよ。コイツ。」と言う。
『なんだ。お前がシスコンなだけで妹ちゃんはブラコンではねぇのか。』
「やめろ。シスコンじゃねぇし。」
言い合いを始めた高校生二人を他所に、タイムを終えたコートでは真剣な空気が漂っている。
あ、かっこいい人!
サーブをするその人を真剣に見つめる時穏を、隣の兄は見逃さなかった。
『夜久はリベロなんだよな。目立つな、アイツ。』
「一人だけユニフォームちげぇもんな。」
「あの、一人白のユニフォーム来てる人が結兄の友達?」
「そう。」と頷く兄。
綺麗にセッターへレシーブを返す姿には惚れ惚れする。
「夜久かっけぇなぁ。」
『アイツ顔もかっこいい。』
『モテる。』
「え、マジで?」
前の友達二人の言葉に反応する兄。
『お前は十分モテてるだろーが。』
「夜久には負けたくねぇ!」
会話の繰り広げられている隣で考える。
そっか、あそこにいる人は結兄の友達や知ってる人がいるのか…。
いつもなら、教室でわいわい話している友達も…こういう場になると…とても遠い人のような感じはしないのかな…。
相手校にはベンチにマネージャーが座っているが、音駒には座っていない。
マネージャーって、いいな。
毎日練習で大変だろうけど…ああやって、一番近くで頑張ってきた姿を、頑張ってる姿を見れて…。
やりがいを、すごい感じれるんだろうな。
「ねぇ、音駒にはマネージャーがいないの?」
「そう。サッカー部にはいんだぜ?野球にも。でもなぜかバレー部だけいねぇんだよな。」
私と兄の会話を聞いていたらしい前の兄の友達が振り返る。
『え、マネージャーしたくなった?』
『じゃあぜひサッカー部へ!!』
サッカー部のマネージャーへ勧誘された。
「ダメダメ。コイツへこたれる。」
「なっ…できる!!」
「へぇ〜ほんとかなぁ?」なんてニタニタ嫌な笑みを向けてくる兄を睨む。
その時、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
コート上で喜んでいるのは兄たちの高校である音駒の部員たち。
整列をして、目の前に並ぶ部員たちを見て鳥肌が立つ。
すごい、迫力。
礼をした後、兄たちが「夜久ー!」と声をかける。
白のユニフォームの人は二カッと笑い手を挙げた。
バレー部って、かっこいい人が多いんだ、と思った。
ただ、部活をしている姿がかっこいいから付き合うなんて人がいたけれど…それも今ならわかる気がした。
スポーツを真剣にして、勝利を掴む姿は…とてもカッコいい。
そんな彼に声をかけたのは、あのかっこいい人だ。
親し気に話しているところを見ていれば、同じ年なのかもしれないと淡い期待を持つ。
…決めた。
「結兄。私、結兄と同じ、音駒にいく。」
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