Love Game[完結] | ナノ

恋人説


「私、榎本時穏っていいます。」と時穏も自己紹介をする。
「2年ですか?」と聞く西谷に「そうだよ。」と返事をすると「おぉ!俺らも2年!」と親し気な雰囲気に変化していく。


「さっきの…は、いいのか。」


「あぁ、あれ、気にしなくていいっすよ。」と田中が苦笑いする。
時穏のさっきのというのは、日向が聞いてきた「誰と付き合ってるんですか」という質問だ。

誰かと付き合ってるように見えたのかな…と少し考える時穏に、夜久が声をかける。


「時穏ー。ちょっと手伝ってくれ。」

「あ、はい!」


「じゃ、また後で。」と二人の元を去る時穏。
その背を見つめる二人。


「…名前呼びだったな。」

「…っつかさ…」


ん?と田中の視線の先を見る西谷。

「時穏ちゃ〜ん?」と張り付けた笑みを見せている黒尾の姿と、夜久の背に隠れている時穏の姿。


「…みんな、名前じゃねぇか!」

「うーん。気のせいか。」

「ノヤっさんの勘は当たらねぇ!」


腕を組んで西谷が真顔で言った言葉に、田中が頭を抱える。
どうやら二人は音駒の部員たちが、全員下の名前で呼んでいるマネージャーのことが不思議に感じたらしい。


「まぁおかげで仲良くなれたじゃねぇか!」

「仲良くなったのか?」


西谷がわははと盛大に笑いながら田中の背をバシバシ叩く。
そんな二人に、烏野の主将が静かに名前を呼んだ。


一方、時穏は黒尾に「烏野のリベロに絡まれてたな。」と言われ、きょとんとした。


「絡まれて…ましたか?」

「いや、誰から見てもあれは絡まれてただろ。」


黒尾が苦笑いする。


「何喋ったんだ?」と夜久が興味深々な様子で問いかける。
時穏は「えーっと…」と言い難そうにする。
その様子がさらに二人を興味へと誘ったようだ。


「…そんなに食いつかれると言い難いことがさらに言い難いです。」と顔を引き攣らせる時穏。


「部員のことか?」と夜久が首を傾げれば、時穏は夜久を見て口を小さく開いた。


「…誰と付き合ってるんですか、って。」

「「…。」」


気まずい3人。
黒尾が逃げるように研磨に何かを話に向かい、残された二人。


「…烏野のリベロ…?」

「いや、それはミドルブロッカーの1年生が…ってどっちも1年生でした。」

「…ふっ…どこ行っても変わらねぇな、時穏は。」


当たり前のことを言う夜久に「夜久先輩もカッコよかったですよ?」と言う。
笑うのを止めた夜久は視線を時穏へ向ける。


「いつもの如く!」

「いつもの如くかよ。」


いつも以上に!って言ってくれるのかと思っていたらしい夜久はフイッと視線を落としたが、「でも、ありがと。」とお礼を言った。


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