自己紹介
ゴールデンウィーク最終日。
昔、縁のあった宮城の烏野高校との練習試合。
何度も行われる試合に、部員たちは疲れ切っていた。
「…。」
時穏はじーっと一人を見つめる。
その姿を見ていたのは、迷子になった研磨。
「…見すぎ。」
「…ねぇ、研磨。」
「何。」
その人が動くたび、視線を追う時穏。
研磨がその視線の先を見て首を傾げる。
視線の先の正体は、烏野のマネージャーだ。
「私と何が違うのかな…?」
「…歳。」
「っ…それはそうだけど!そうじゃなくて、もっとこう…こう……」
「こう…なに。」
周りは試合を終えた後の片付けを行っている最中で、少し視線を向ければ真っ黒なジャージの烏野高校の部員がいる。
時穏の視線の先には、物凄い形相で研磨を見ている烏野のセッター。
「…怖い。」
「…。」
時穏は影山を見るなりそう呟くと、研磨はそそくさとその場を離れていった。
視線に気づいた様だ。
研磨の背を見送っている時穏の背では、烏野の2年生二人と1年一人が何やら話をしていた。
それを知らず、時穏はトボトボと部員たちの元へ歩み寄る。
「あ、あのっ」
「!!」
目の前に現れた、少年。
オロオロしていて、少し身を震わせているその様子を見て緊張している様子。
時穏は烏野のちっさいミドルブロッカー…と脳内で試合風景を思い出す。
「音駒っの…マネージャーさん…ですよね?」
「う、うん。」
そうだけど、何?と問いかけようとした時、日向の背後に2年の田中、西谷が現れた。
あ…リベロの人。と…ウィングスパイカーの人。と再び脳内で試合を思い出し、二人に微笑む。
言葉を無くした、そんな顔をした目の前の3人。
しかし屈しないと、西谷が背筋をピンと伸ばし「あのっ」と声を張り上げる。
思わず、こっちも身が強張る。
「誰と付き合ってるんですか?!」
西谷の前に出て、日向がそう問いかける。
え、と目を丸くする時穏。
「あっバカッ!!それ聞かないことにしただろっ!!」と田中が言うも、隣で西谷が「いや、もう…聞こうぜ。」と意を決したような目を田中へ向ける。
「ノヤっさん!!」
二人が手を握り合う。
日向は近くを通った研磨に「あ!!研磨!!」と駆け寄っていった。
「あっ日向逃げた!」と田中が言っている隙に西谷が一歩前へ出て時穏に近づくなり目を輝かせて「あの、俺、2年の西谷夕っていいます!」と自己紹介をした。
「西谷くん…は、リベロだよね。」
「はい!」
時穏がふわっと微笑むと満面の笑みで頷く西谷。
それを見て田中も「俺、田中龍之介っていいます!」と自己紹介をする。
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