迷子
宮城に着き、早速やらかしてくれた。
「研磨どこ行った?!」
新幹線を下りてから、少ししたところ。
姿を消した研磨。
黒尾は「東京じゃねぇんだから…」とため息をつきながら携帯を操作する。
手分けして探したいところだがみんな東京民。宮城は誰もわからない。
「地図見りゃ何とかなるだろ。」
「全員で探した方がいいと思うぞ。」
3年生が各々黒尾に提案する。
悩んだ末、黒尾は「いや、俺一人で探すわ。たぶんアイツ携帯見てるだろうし…」と言って携帯の画面を見る。
どうやらもう返事が来た様子。
「監督、」
猫又監督に結局黒尾だけが探しに行くと告げ、他の部員たちはみな練習試合の相手が待つ学校へ向かった。
「…黒尾先輩、大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。主将だぞ?」
「確かに。」
時穏が心配する様子を見せるが、ほかのみんなはそうでもない様子。
さすが1年も長くいれば黒尾先輩のことをもっと知っているんだろうな、と考える時穏。
夜久が「あ、」と口を開いた。
なんだ、と時穏は視線を夜久へ向ける。
「…なんでもなかったわ。」
「…。」
眉間に皺を寄せる時穏。
その顔を見て吹く夜久。
「すごい顔してるぞ…」
「いつもです!!」
「嘘つけっ」
ケラケラ笑い賑やかな夜久と時穏を見て海が「平和だな」と呟いた。
無事、研磨が見つかり、練習試合も勝利。
黒尾と夜久との関係も以前と何ら変わりなし。
時穏には、良い遠征だと感じていた。
それは、遠征が終わるまで続くと思われていた。
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