Love Game[完結] | ナノ

隠された気持ち


お昼休み、黒尾が監督に呼び出されいない間、結葵と夜久は購買へ向かっていた。


生徒で賑わう廊下、結葵が夜久だけに聞こえる声で「好きなんだろ?」と問いかける。

夜久は「いつから知ってたんだよ。」と返す。
その返事は、結葵の疑念を確信へと変えた。

口角を上げた結葵が「2年の時から。」と返事をすると夜久は静かに微笑んだ。

夜久は思い出した。
はじめて、時穏に会った時のことを。


「何思い出したんだよー」

「時穏に会った時のこと。」

「…試合ん時か?」

「そう。俺、たぶんあの時から好きだぜ。」

「…まじ?」


結葵はハッキリ“好きだ”と言った夜久の発言を聞いて、その場に立ち止まる。
階段の中途半端な段数のところで、夜久も振り返った。


「マジ。」


ニッと笑うと前へ向き直り階段を下って行く夜久の背を見つめてポカーンとする結葵。


「おい、榎本ー。そこ邪魔だから。早く行こうぜ。」

「邪魔なはずがねぇぜ。やっくん。俺は透明人間なはずだ。」

「驚きのあまりくだらないこと言って現実受け止めようとすんのお前の悪い癖な。」


冷静に夜久が返す。
そばまで行けば、再び階段を下りる。
今度はしっかり並んで。


「…夜久さ。」

「んー?」


結葵は、チラッと隣の夜久の様子を見た。
しかし夜久はいつもと何ら変わりない。


「一目惚れだったってことでいいんだよな?」


結葵の言葉を聞いた瞬間、平然としていた夜久の表情が少し変わった。
目を少し開いたかと思えば、ほんの少し顔を赤く染めたのだ。


「ちげぇよ。」

「え?」


相変わらず少し顔を赤くして、ぶっきらぼうに答えた夜久に、結葵は首を傾げた。

[ 23 / 80 ]
prev | list | next

しおりを挟む