Love Game[完結] | ナノ

Game


『俺とゲームしようぜ。』

『え?ゲーム?テレビゲーム?』

『ちげぇよ。』


黒尾が夜久からやっと逃れれたようで、チラッとこちらを向く。
怖い顔で歩み寄ってくる黒尾を見ながら、兄と交わした会話を思い出す。


『黒尾が時穏にやきもち焼くか。否か。』

『そこまで心小さくないとおもうけど…』

『心の大きさじゃねぇんだよ、バカ。』

『…なに。』

『どれだけ独り占めしたいかがそこでわかんだよ。』


何故か、やけにドキドキする。
歩み寄ってくる黒尾先輩に。


結兄のせいだ。


「時穏。」

「はい。」


低い声に視線を上げれば、機嫌が良く見えない。
それもそうか、夜久先輩にあれだけ攻められれば…。


肩にぽんと乗せられた黒尾の大きな手。
時穏は「え?」と声を漏らすと、黒尾が身を屈めるのがわかった。


「誰にでも抱き着くんじゃねぇ。」

「…っ…」

「てんめぇ黒尾!」

「あだっ…」


黒尾の後頭部直撃の球を投げたのは間違いなく夜久。
後頭部をさすりながら振り返る黒尾に夜久は叫ぶ。


「時穏に手ぇ出したら許さねぇからな。」

「…夜久先輩。」


いつもより数割増しでカッコいい夜久の姿にきゅんきゅんする時穏。


「…時穏は夜久くんが好きなんじゃないの?」

「なっ…そりゃ好きだけど…黒尾先輩の好きとは違うの!」

「…その確信はどこから?」

「黒尾先輩に触れられると…こう、胸が締め付けられて…すごいドキドキする!」

「…それ、身に危険を感じてるの間違いじゃない?」

「…研磨くん?今日はやけに意地悪言うんだね。」


どこからか現れた研磨にそう言えば彼はそれ以上何も言わずとぼとぼとコートへ向かった。

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