どうしたらいいの
一方、2年3組の教室に戻った時穏はとぼとぼと研磨の元へ向かい、彼の隣に腰を下ろした。
ゲームをしていた研磨の視線がチラッと時穏へ向けられる。
「…クロと、話せた?」
「…うん。」
「そう、よかったね。」
それだけ言うと、視線を戻し指を動かす研磨。
時穏は口をぎゅっと詰むんで、まだどきどきしている胸を必死に抑えようとしていた。
静かな時穏を不思議に思ったのか、研磨が「何かあったでしょ。」と口を開いた。
研磨のしているゲーム画面を見つめながら「うん。」とだけ言い、ボーっとする。
研磨は眉間に皺を寄せた。
「早く言いなよ。めんどうくさい。」
「な…そんなこと言わないでよ…」
「なにしたの。」
「なんで私が何かした前提なの?」
「じゃあされたの?」
「黒尾先輩はそんなことしない!」
普段通りの彼女の姿にふっと表情を緩めた研磨。
時穏がムスッとした顔のまま、「告白みたいなことしちゃったかもしれない。」と呟いた。
「ほら、時穏がしたんじゃん。」
「うぅう…けんまぁ…」
「で、クロの反応は?」
ちょうどクリアしたのか、研磨の視線が彼女の方へしっかり向けられる。
時穏は研磨の目を見ながら「べつに…なにも。」と首を振る。
研磨は再びゲームの画面に視線を移す。
「まぁ…告白みたいなことされたら誰でも反応に困るよね。」
「つい、勢いで…」
「つい?勢い?」
眉間に皺を寄せながら指を動かす研磨。
その顔を見つめながら「だって、黒尾先輩カッコいいんだもん…」と言うとその表情が一気に引いた顔に変化した。
「ちょっと、引かないでよ。」
「…ほんと、好きだね。クロのこと。異常。」
「黒尾先輩がカッコいいのは女子ならわかる!異常じゃないってことも!」
「おれ、男だから。わからない。」
「…それもそうだね。」
納得する時穏。
恐らくこの会話を聞いた他の者は呆れて何も言えないだろう。
「どうしよう…何もなかったことにしたい。」
「“聞かなかったことにして”っていえば?」
「言ったって絶対聞いてくれないよ…黒尾先輩だし…って、それ、告白したって自ら言ってるようなものじゃない。」
「…だって、クロだし…わかってるよ?きっと。」
何年、幼馴染みしてると思ってるの?とでもいうような眼を向けられた時穏は、「どうしたらいいのー」と項垂れた。
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