意識
僅かに、顔が赤い気がした。
「あー…」と髪を掻くと視線をチラッと彼女へ向けた。
胸が、一度大きく鳴る。
「時穏が俺を避けるから余計意識すんだよ。」
「…。」
口を、詰むんだ。
「…意識しないように、話しかけようと思って部活行ってんのに、お前避けるし…」
「…ごめん、なさい。」
静かに、謝る時穏に溜め息を一つついた黒尾。
「おかげでここ数日お前のことで頭いっぱいだわ。」
「っ…」
目を丸くした時穏は、黒尾の思いがけない言葉に頬を赤く染めた。
俯く時穏を見る黒尾は、「おい、聞いてんのか?」と顔を覗き込んだ。
慌てて顔を背けた時穏。
しかし、一瞬見ただけでもわかるほどに彼女の顔は赤かった。
「…なぁ、時穏。聞きたいことがあんだけどさ…」
「?」
チラッと視線を向けた時穏。
「…あー…やっぱりなし。なんでもねぇわ。」
「え…なんですか?」
目の前に座り込む黒尾を見て気になる時穏。
「いや…そろそろ休み時間終わるな。帰るか。」
「…。」
立ち上がる先輩につられるように立ち上がった時穏。
扉のほうへ歩みを進める黒尾の背についていくように歩みを進めていたが、その背に手を伸ばした。
黒尾のブレザーを掴み、身を進めていた黒尾は着ているブレザーが引っ張られていることに気づき振り返った。
「時穏?」
「黒尾先輩。」
「…?」
どうした?と問いかけようとした時、時穏のブレザーを握る手に力が入ったのがわかり、口を閉じた黒尾。
時穏の口が動く。
「私は、毎日先輩のことで頭いっぱいです。」
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