Love Game[完結] | ナノ

破壊力


「えっと…どうゆう状況だ?コレ。」


ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めると、顔を上げてニッと笑った時穏。


「お礼です!」

「…え。」


そっと腕を解くと、「じゃ、お先に失礼します。」とペコッと頭を下げその場を去る時穏。

心臓はバクバク。
抱きついた感覚を思い出して顔を真っ赤にする。


「…抱き着いちゃった…。」


「お、お礼でもなかったらしないけど!」と自分に言い聞かせながら部室に戻るも、胸がぎゅっと締め付けられたような感じがずっとしている。


「…好きです、先輩。」


そっと呟いた言葉は、静まり返った更衣室に消えた。


一方、抱きしめられた黒尾は準備室で固まっていた。


えっと…?
お礼でハグしろ、って言ったのは俺。
抱きついて欲しいと思ってたのも俺。

のくせに…


「…ふっ…なんだ。俺にもできんじゃねぇの。」


思ってた以上の破壊力だ。


「夜久の奴、いつもこんなの耐えてんのか?…女として見てねぇのか。」


女の方から抱きしめられたことなんて、初めてだった。
予想外のことをされて、正直戸惑っている。


いや、ずっといつかは…って考えてたけどさ…まさか、ここまで早くこんな展開になるとは考えてねぇだろ?


体育館の電気を消し、出入り口に向かっていく黒尾。


「やってくれんなぁ…時穏。」


手の甲で口元を隠すと、必死に顔の熱を下げようとした。

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