Love Game[完結] | ナノ

どうなりたいの?


“ハッキリしないと、他の女(ひと)に取られちゃうよ?…クロ、モテるんだから。”


と、言われたものの…。


放課後、体育館。
音駒のジャージを着て、いつもに増して黒尾を目で追う時穏。

研磨の言葉の効果が出ていることには間違いない。
しかし、そんな彼女の様子を見ていた研磨は眉間に皺を寄せて溜め息をついた。


「…見てわかるなら、もっと前に気づいてるはずなんだけど。」

「?」


研磨の独り言を聞いて、隣にいた山本が彼を不思議そうな目で見つめた。



どうなりたいんだろう…?


時穏は、考えていた。


“恋人になりたいんじゃないの?”


研磨の言葉が脳裏に過る。


「…恋人…。」


確かに、恋人になれたら…
あの腕に抱き着けるだろうし…
いくら見たって変に思われないだろうし…
他の女の子が先輩を呼んで立って、胸は痛くならない…んだろうな。


「っ…研磨カバー!」


珍しい。
黒尾先輩のレシーブが乱れた。


研磨がアンダーで上げると山本がアタック。


ホイッスルが鳴り響いた。


ハッと我に返った時穏は、ボトルを出すと同時にタオルを渡していく。


「きょうはどーしてそんなに調子悪いの。」


黒尾の隣で研磨が問いかける。
彼の視線が、何かを探っている感じがした黒尾は視線をあさっての方向へ向け「まぁ、こんな日もあるわな。」と返事する。

研磨がボトルを見つめてボソッと言った。


「視線、気にしすぎ。」

「…気にするだろ。あんなの。」


「何かしたっけか?」と頭を掻く黒尾を横目に、研磨が言う。


「何かしたのは、たぶん…おれ。」

「…は?」


研磨に聞き返した黒尾だったが、監督に呼ばれたため話はそこで終わってしまった。

研磨は心の中で思った。


時穏に言ったの、いい感じに効果が出てるかも。

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