赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

大丈夫は大丈夫ではない


今まで、こんなに考えたことなかったから…
あっても、毎日ではなかったから。

変なんだ。怖いの。
私だけが、研磨をどんどん好きになってて…依存してしまってるんじゃないかって。


「名前?食欲ないの?」

「うん…ちょっと食べたし、もういいかな」

「ダイエット?」

「そんなわけないでしょー、こんなに細いのに。これ以上細くなって骨になるつもり?」

「骨って…」


食欲もでないし、何をしてもやる気が出ない。
ホント、病気なんじゃないか?
友人二人は明らかに気を使って笑顔を向けてくれる。
…ホント、ごめんなさい。それしか、言えない。


自分ですらわからないこの感じに戸惑っている。
ただ、彼がいると少し楽になるんだ…


「名前、元気ねぇな」

「うん…忙しいから?」

「俺に聞くなよ…本人に聞け?まぁ、格段に忙しくなったのは強ち間違いではないと思うが…」


チラッとタオルを手にする研磨を見る黒尾に首を傾げた研磨。


「何?」

「いや、最近二人で会ったのいつだ?」

「え?毎日会ってるけど…?」

「違う。デートとか」

「わからないよ。休みないし」


そうだよなーとよくわからない返事をして一人考えている黒尾をよそに、研磨はボトルを取りに彼女の近くへ向かう。

何か、あった?
大丈夫?

声をかけようと、脳内で考えながら向かっていたというのに、監督に呼び出された彼女は遠退いていく。

ため息がこぼれた。


スレ違いが、多い気がする。
仕方ないけど…まともに話してないし。


ドリンクを手にした時、背後からシャツが引っ張られる感覚がした。


「研磨…」


か細い声で、呼ばれて振り返れば彼女がシャツから手を離した。
顔を見た時、驚いた。


「顔色悪すぎ…大丈夫?」

「へへ…うん。大丈夫」


へらっと笑う彼女だが、好きな彼女の笑い方ではなかった。

まぁ、大丈夫なわけないんだけど。


「保健室行く?」

「なんで…?」

「その顔で大丈夫って言われても説得力ない」


腕を掴み、そばにいた黒尾にすぐ戻るとだけ伝えて保健室へ向かう。


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