何でも伝えて
「溜め込みすぎ。どうせ勘違い。」
「なっ…そんなのわかんないじゃ…」
「わかる。」
ぎゅっと手を握られ、研磨は俯く。
「おれの方が、名前いないとダメなのに…離すことなんてないし。だから名前が不安になる事がない。」
そう言われてしまえば何を言っても、無駄な気がした。
「…あの女の子と話してる研磨、いつもの研磨だった。」
「…名前といる時間が増えて、クラスの人ともだいぶ話せるようになってきたんだよ?…まだ名前みたいに、なんでも話せるわけじゃないけど。」
「…やだ。」
「?」
俯いたまま話していた研磨が、すっと顔を上げた。
その瞳に映る名前は怒っている。
「話せるようになったことは、私も嬉しいけど…私だけでしょ?研磨の話、聞けるの。」
「…それ、ヤキモチ?」
僅かに首を傾げる研磨。
「特別な存在でいたい。」
せめて、その場所は私がいたい。
「じゃあ、あんまり変わらないで。」
「…それは、だって…私に飽きちゃったのかもって…」
「飽きない。まだ、全然名前のこと知らないと思ってる。…不安になるの、名前だけじゃないんだから。」
「もうやめて。」と名前を真っすぐ見つめる研磨。
「…変わったの気づいてた?」
「うん、知ってた。」
「どう思った?」
「…嫌だった。普通に。」
おれと、二人っきりの時だけでいいでしょ?それ。
視線を上げた先の名前の表情を見て、すぐ視線を落とす研磨。
変わった。
本当に、研磨は変わった。
だって、全部伝えてくれることなかった。
「不安になる前に、言って。おれまだ、そこまで名前のこと気づいてあげられないから。」
「じゃあ、好きって言って欲しい。」
「…言ってなかった?」
「言ってない。」
「…わかった。」
握られたままの手をぎゅっと握った。
まるで、指切りをしたように。
「名前に、お願いがあるんだけど。」
「なに?」
申し訳なさそうに、そっと耳打ちする研磨。
真っ赤になった理由は、研磨だけが知っている。
-END-
リクエスト:「不安になるヒロイン」
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