赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

夜久先輩


廊下に出たその本人は、制服姿の夜久に新鮮な感じがしてヘラッと笑う。


「へへ…なんか夜久先輩と部活以外で会うって変な感じしますね。」

「はぁ?いい意味で言ってんの?それ。」

「はい!」


「そう、ならいーけどさ。」と苦笑いをする夜久から手渡された一枚のプリント。
それを受け取ると読む。

そんな彼女に「さっき、話してたみたいだったけど、よかったのか?」と気にしているような言葉をかける夜久。


プリントから視線を上げ、あまり目線が変わらない夜久を見て「あぁ、はい。寧ろ、助かりました。」と返事をする。


それに首を傾げた夜久は「助かった?」とさらに問いかける。


「応援団、誘われたんです。」

「え、応援団?」

「はい…でも、私にはできないな、と思って。」



へへへ、と苦笑いをする名前。



「そのへんの誰よりも運動神経の良い苗字がか?」



その言葉に、ギクリとした。
相手が悪かった…いや、バレー部なら山本やリエーフあたりなら今のでバレることはなかったのだろうが、その他になら誰にでもバレてしまうような嘘をついてしまっていたことに気付く。


名前の強張る表情を見て夜久が察したように話す。



「後悔するような高校生活を過ごすなよ。」

「…夜久先輩…。」



なんて声をかければいいんだ…と悩む夜久に、名前が口を開く。



「しませんよ。バレー部に入ってマネージャーしていなかったら、その時点で後悔していましたけど。」

「…わりぃな。」

「いえっそんな…って。」



夜久の背後から襲おうとしている人を見て固まる名前。
夜久がその表情に気付いた時にはもうすでに遅かった。



「“俺たちが全国連れてってやる”くらい言えよ。」

「なっ…離せ!黒尾っ」



ガシッと首というより、顔をホールドした黒尾先輩の腕を掴み怒る夜久の姿を見て苦笑いをする。



「安心しろ、名前。ちゃんと連れてってやる。」

「…はい。」



自身に満ちた主将からの言葉に、ヘラッと笑う名前。



「ってかお前来るんなら俺来なくてよかったじゃねぇかよ。」

「だって俺ここ来たら、ほら、目立つだろ?」

「うるせぇ、黙れ。誰がちいせぇから目立たねぇだ。」

「痛い!!痛い夜久!噛むなっそんなこと言ってねぇ!悪かった…!」



先輩二人の姿にクスクス笑っている名前には、もう何の悩みもなかった。

この人たちに、ただついて行こうと思った。




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