前日
バレンタイン前日の部活後。
名前は、研磨と話をしていた。
「名前の家に?」
コクリ、と頷く名前。
難しい顔をする研磨を見て、でもっと口を開いた。
「うちの両親、今でも仲良くて、バレンタインの日は日付変わる頃に家に帰ってくるから誰もいないの。それまでにはもちろん帰すし…」
「お願い!」と手を合わせる名前。
そこまでお願いされなくとも、研磨は行くつもりでいた。
「それは、いいけど…名前の親、毎年どこいくの?」
「去年はね…」
名前の両親の話をしている時、自主練を始めようとしているリエーフが「研磨さーん!!」と駆け寄ってきた。
「トス上げてくださいっ」
「ヤダ。」
「早っ!!1本でいいんで!お願いします!」
「イヤ。帰る…」
「そんな事言わないでくださいよーっ」
研磨のジャージを引っ張るリエーフ。
名前が苦笑いをしながら「じゃあ、私があげようか?」と申し出た。
「えっマジですか?!」と食いついたリエーフの腕を掴んだ研磨。
「…1本だから。」
「えっ研磨さん帰っても…」
「それ以上何か言ったら名前と帰るから。」
「それはダメです!」
先にコートへ向かって行ったリエーフの背を追うように歩いていく研磨。
その背を見つめていた名前に、振り返った研磨が遠慮がちに手を振った。
…可愛い…。
きゅんとする名前を知ってか知らずか怪訝そうな顔をした研磨はコートへ向かった。
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