赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

どっちもどっち


着替えを終え、帰路についた研磨の背後から声をかける人物がいた。


「おい研磨。」

「…クロ。」


黒尾に呼び止められ、振り返れば黒尾も足を止めた。


「お前焦らねぇのか?」

「…焦るよ。」


何のこと?と返されると思っていた黒尾だが、研磨は黒尾が何を言いたいのか分かったようだ。


「前も言ったけど、リエーフみたいに…積極的に声掛けに行けないし…あんな風に聞けない。」

「…何にそんな自信がないのかわからねぇけどな…」

「…でも、自信は持ってるつもり。」


言って、黒尾に背を向けた研磨。
それを追いかける黒尾。


「名前は、俺が声かけやすいようにいつも笑ってくれる。」

「笑顔…ねぇ。」


部活前に名前から聞いた話を思い出し、難しい表情をする黒尾。
その顔を見ていたらしい研磨が眉間に皺を寄せた。


「何…?」

「…お前さ、名前とキス以上のことしないのはなんで。」


それを聞いた瞬間に、研磨は「しようと思ったけどクロが邪魔したんじゃん。」と小さな声で言う。


「あー、ゴメンナサイ。」

「もういいけど…」

「あれから手出してないって?」

「…なんで知ってるの。」


徐々に、研磨の機嫌が悪くなっているのを感じながら思う。


今日の俺は、いつもの俺じゃねぇぞ。


「名前、欲求不満らしいぞ。」

「………え?」


ここで、いつもの俺ならニヤニヤする。
でも、きょうは違う。


「…名前が言ったの?」

「いや。名前がそれらしい夢を見たって相談を。」

「…それって、どんな?」

「んなの聞けるわけねぇだろー?でも本人が言うんだから、間違いない。」


ふーん、と前を見て歩く研磨。


…研磨って、どういうときにそういうことしたいって思うんだ?


それが分かれば名前に教えてやるのになぁ、と明後日の方向を向きながら考える。


「…名前は、どういう時に、そう思うのかな。」


黒尾はその疑問に口角が上がるのを感じた。


どっちもどっちかもなぁ。


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