赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

欲求不満


「お前それ欲求不満だろ。」

「ですよね…」


部活中、黒尾に相談するなりズバリ言われてしまった事実に落ち込む。

「名前も女だったわけだな。」と笑う黒尾に、ムスッとする。


「しかし名前がやる気あっても…向こうがな…」


視線を向けた先には、研磨の姿。
リエーフが何か話しているその姿を見ている。


「研磨とはー…」

「1度も…」

「あーそう。」


ふうん、と何かを考えている様子の黒尾に、名前は嫌な予感がした。



「何もしないでくださいね。」

「わかってるわかってる。」


ほんとにわかってるんだろうかこの人は…。





「名前さん!もうすぐバレンタインですよね!」


片付けの途中であるにも関わらず、リエーフは腰を曲げて名前の顔を覗き見た。

名前は数回瞬きをすると、「何が言いたいの?」と首をかしげた。


「えっだってマネージャーじゃないですか!」

「…そうだね。」

「チョコ、くれますよね?」


まるで餌をくれ、と言われているような感覚に陥ってきた名前。
大きな犬みたいだな、と、目の前のリエーフの頭に手を置いた。


「小さいのならあげるよ。」

「エッ!マジですか?!」


目を輝かせるリエーフに口角を上げる名前。

その表情を見て、リエーフは言葉を飲み込んだ。





部活後、部室で着替える部員たち。
リエーフの隣には、研磨の姿があった。


「なんで名前さんはあんなに可愛いんですかね、研磨さん!」

「…。」


耳は傾けているものの、不愉快な研磨は無言を貫き通す体制に入っている。

その背後でメンバーは様子を伺っており、各々表情は異なる。


「名前さんの作るチョコ、絶対美味しいんだろうなぁ…」

「…名前、料理苦手だよ。」


えっ、そうなんスか?!と意外そうな顔を研磨へ向けるリエーフ。

研磨はそれ以上何も言わない。


メンバーは思った。


絶対嘘だ。


と。

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