ごめん、
ハッとした時には、授業が終わっていた。
シャーペンがしっかり握られていて、ノートには何を書いていたのかわからない字が並ぶ。
「鼻血出そう…チョコレート食べすぎた感じがする…」
はぁあ…と盛大にため息をついた後、机に項垂れた名前は、火照りを残す頬に手を添えた。
鮮明に、そのものを創る夢というものに…これ程驚かされたのは初めてだ、と彼女は思う。
まだ、クリアに耳に残る声が、とても甘くて…ドキドキした。
…欲求不満なのかな…。
今考えてみれば、あれは研磨ではない。
恐らく名前のどこかにいる彼の姿なのだろう。本人は、それに気づくことなく余韻に浸っていた。
その時、目の前の窓がガラッと開いた。
あまりに驚いた名前は、違う意味でドキドキする。
目を見開いた、研磨の姿があった。
彼自身、名前がそこにいることは知っていて開けたのだが、あまりに彼女が驚いた様子だったため本人も驚いたのだった。
「…な、何?」
「それは私のセリフッ」
「驚かさないでよー余韻に浸ってたのにー」と怒る彼女に、首を傾げる研磨。
「いい事でもあったの?」
「……。」
思い出して、顔を赤くした名前は、首を横に振った。
「ううん!なにもっ」
眉間に皺。
研磨は、「寝てた?」と名前の頬に触れた。
それは、
「跡、ついてる。」
「…ごめん、研磨。」
「?」
夢に浮かれた自分が、虚しくなった瞬間だった。
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