赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

甘い物


「研磨。」

「なに?」

「チョコすき?」

「…すきじゃない…」


そう来たか…と、隣でゲームをしている研磨をチラッと見る。

バレンタインが目前に迫っているというのに、名前は呑気に構えていたことをこの時悔やんだ。


「…じゃあ、何が好き…?甘い物がダメなら、辛いもの?辛いものって、誰か好きな人いた気が…」

「そんなことより…」

「そんなことより?!なんて事言う…のっ…」


グッと肩を押され倒された身。
目の前には研磨と、その奥には天井がある。

状況を把握する前に、目の前の彼は名前にキスを落とすと、そのまま首筋へ視線が落ちる。


「け、研磨?!待って…」

「待たない。…違う。」

「え?」

「待てない。」


そのまま服の裾に指をかけた研磨の手を掴んだ。

研磨は、ゆっくり身を起こして、その手を反対の手でそっと握ると「あるよ、甘い物で好きなの。」と呟くように言う。

なに?と聞き返そうとした名前の目と、視線が重なり、言葉を飲み込んだ。


「名前の甘い声。」


その瞬間、気が遠のいた。


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