け、研磨くん?
不思議そうに名前を見つめる研磨の目。
そんな彼の頬に手を添えた。
ピクリと動く研磨の顔、目がまた開かれた。
「…好き。」
研磨の瞳に映る彼女は、頬をほんのり紅くして愛おしそうに自分を見つめる。
それだけで、いいとさえ思ってしまうほどに。
名前の手に自分の手をそっと重ね、そのまま頬をすり寄せる。
恥ずかしそうにする研磨の姿に、きゅんとした。
「っ……」
「名前の手、落ち着く。」
その言葉を口にした、ほんの僅かな一瞬。
研磨の表情が柔らかくなったのを、名前は見逃さなかった。
「うぅ…」
「え?」
ぎゅっと目の前の研磨に、腕を回す名前。
堪らず、抱きしめたと言った方がしっくりくる。
「…大好き。」
「…もっと…」
「もっと?んー…」
真剣に悩む彼女の首筋に顔を埋めれば、ビクッと彼女の身が揺れた。
「ちょ…け、」
「黙って。」
研磨の舌が名前の首筋を伝う。
「ンッ…」
「声、抑えてて。」
静かな場所だからか、研磨の声がやけに色っぽく感じた。
強く、首筋の一箇所を吸われ、そっと研磨が身を離した。
「…けん、ま?」
「まだだよ。」
名前の首筋から鎖骨にかけて、指が伝う。
「う…無理…ドキドキし過ぎておかしなる…」
「まだダメ。」
ジャージのファスナーを中央部まで下げ、名前の左肩を掴む研磨。
そして再び、鎖骨に唇を寄せた。
「っ…擽ったい…」
研磨の髪が首筋や鎖骨に触れる。
ぺろっと舐めあげられれば、事は終了の合図。
そこを見て研磨は、口角を上げた。
「…うん。」
「……まさか…」
名前の視線からふいっと顔を背けた研磨。
「き、キスマークつけたでしょっ!」
「うるさい…」
「うるさいじゃないよっ見えるとこにつけた?」
「じゃなきゃ意味無いでしょ?」
「っ…」
考えたこともなかった。
まさか、研磨に…こんなことされる日が来るなんて…。
そもそも独占欲強く無い方だと思って…た…し…あれ。
「怒った?」と首を傾げる研磨を見た瞬間、顔を真っ赤にした。
「…け、研磨くん。もしかして…誰かにヤキモチ妬いた、の?」
名前の問いかけに、再び怒った表情を見せる研磨。
それは、確信に至った。
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