赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

そんな気分


誰もいない部室に入るなり、しっかり扉を閉めた研磨を、不思議そうに見る名前。


「?なに?」

「…うーん…いつもの研磨じゃない。」


と、思って…。と少し浮かない表情をする彼女。
至って、研磨は普通だ。


ただ、普段見せることのない一面を、見せてしまっただけのこと。


「どこらへんが?」

「…強引…な、とことか。」

「…うん。まだ、ある?」


研磨の金色の髪が揺れた、その隙間から見えた瞳と目が合った。

何故か、名前の胸の拍動が徐々に増加していく。
本人はぎゅっと胸元を抑え、必死に気のせいだと思い込む。


「っ…お、怒ってる!」

「うん。それもそうだけど…」


そっと、名前の目の前に立つ研磨を見上げれば、手を優しく握られる。


「名前がおれのこと好きな、確証が欲しい、と思って。」


ジッと見据えられると、更に鼓動は増した。
このまま、ずっと一緒にいたら…死ぬんじゃないかとさえ思う。

それくらい、目の前のいつもと違う研磨にドキドキする。


「…け、研磨…変だよ。そもそも、なんで怒ってるの?」

「…言わない。」

「なんで…」

「…言いたくない。そんな気分。」


「どんな気分だ。」と名前は頑なに言おうとしない研磨を目の前に、じっとその顔を見つめる。

相変わらず、ムスッとした顔をしている。

その顔を見ていたら、ふと、込み上げてきたいつもの感情。
また、言ったら…怒られるな、と思った名前。

何も言わず、研磨の頬を覆う髪を避ければそこに口付けた。

無言のまま、研磨の少し驚いた様な視線だけが彼女を捉える。


「…証明って、どうしたらあげられるのかわからないけど…」


相変わらず繋がれたままの研磨の手をギュッと握りしめた。


「不安にさせた?」

「…。」


名前の問いかけに視線を落とす研磨。


「研磨が、何を見て怒ってるのかもわからない…」


多分、不安にさせるようなことしたんだろうなぁ。


そっと、研磨を抱きしめてから名前は研磨をそのまま座らせた。


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