おれ、無理
覗いた首筋に唇を落とす。
びくりとした彼女の身に回した腕に力を込めた研磨。
名前は高鳴る胸と共に、上昇していく体温を感じながらぎゅっと研磨の肩を握る。
「っ…ん…」
ペロッと首筋を伝い思わず零れた声。
手で口元を覆った。
「名前。」
「ん?」
声のした方を向けば、瞬間、唇を奪われる。
何度も重ねる内、そっと身が倒された。
目を開けた時には、目の前に研磨がいて…
「…おいしそうだから…食べたい、んだけど。」
「っ…」
彼は、本当に自分の知っている研磨だろうか?と目を見開く名前。
同時に、口元を両手で覆う。
「ね?聞いてる?」
「…お、おいしくないと思うけど…」
その返答に、ふっと笑う研磨。
「こういう時だけ真面目。」
「研磨に言われたくない。」
「おれいつも真面目だと思うけど…」
「嘘だーいつもどうやって疲れないように練習しようか考えてやってるの知ってるんだから。」
それを言われては何も言い返せない、と研磨は視線を彼女からそっと逸らす。
視線を逸らした研磨の首に両腕を回した名前が「いいよ。」と返事だけをした。
「え…おれ…無理。」
「えっ?」
拍子抜け、とはこういうことをいうのだろう。
「なっ…ちょ…研磨くん?!」
「…そうじゃなくて…」
身を半分起こした名前をチラッと見る研磨。
首を傾げる名前。
「名前を抱き上げることはできないから…あっち。」
研磨の視線を見て「あ、」と思う名前。
そっと身を上げ、ベッドへと歩み寄ろうとした。
「研磨ー俺の雑誌置き忘れただろ。」
「…。」
ノックもなしにバタンと勢いよく入って来た黒尾。
「あれ、名前まだいたのか。あした朝練あるんだぞ?わかってんの?」
「……はい。帰ります。」
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