赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

ま、頑張れよ


頭を雑に撫でると「よかったな。」と言う黒尾。
くしゃくしゃにされた髪から覗く研磨の視線はじとっと黒尾を見つめて「…嬉しくないんだけど。」と呟いた。


「じゃあ俺は帰る。」


立ち上がった黒尾に釣られるように立ち上がる研磨。
黒尾の視線は相変わらず爆睡している名前へ。


「…ま、頑張れよ。」

「…何を。」


意味が分からない。と黒尾を見ながら部屋を共に出る。
黒尾を見送った後、部屋へ戻った研磨は名前の近くにしゃがみ込んだ。


「…無防備。」


外はすっかり暗くなっており、眠る彼女にそろそろ帰った方がいいよと肩を揺らす。


「名前。」

「…んー…待って、あと10秒…」

「…10、9、8…」


本当に10秒で起きるのだろうか、と思った研磨は眠っている彼女を使って検証することにした。
カウントダウンされていく数字。


名前の視界がゆっくり開かれる。


「3…2ー、1…」


その瞬間、名前がむくりと身を起こした。
ぼーっと目の前の研磨を見つめる名前に、研磨が「本当に10秒で起きた…」とふと笑みを浮かべる。


研磨のその笑みを見た瞬間、名前は思わず目の前の彼に手を伸ばした。
ふわっと香った彼女の香り。


思い出したのは、名前をはじめて見た時の場面。


ぎゅっと抱きしめられる自分の身。
研磨の腕がそれに答えるように彼女の背に回された。


「名前、フルーツの匂いがする。」

「いつもと違う?」


普段、どんな匂いがするなんて言わない研磨。
名前は少し何かに不安を感じたのか研磨に問いかける。

髪を掻き上げ、覗いた首筋。


「ううん…変わらないな、と思った。」

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