赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

オフ


すっかり秋らしい風景になってきた時期。
春高予選目前に、オフが入った。

体育館に轟いた部員たちの声は一生忘れないだろうと思うほど、大喝采だった。


「主将なんだから、休みにして。」


なんて黒尾に言う研磨をたまに見かけたことがあるが、彼にとってはとても嬉しい一日だろうな、と思っていた名前にお誘いがあった。


「オフの日、うち来る?」


片付けの最中、ボールを手から落とした名前。
そのボールを拾う研磨。

至って、彼は冷静な様子を見せる。


「え?」


信じられない名前が研磨に聞き返す。
研磨はチラッとどこかへ視線を向けた。


「クロがうち来るって言ってるんだけど…どうしてか名前を呼べって。」


「…何企んでるのか知らないけど。」と据わった視線を向ける。
その先は、黒尾の姿があった。


「行ってもいいの?」


名前の問いかけに、研磨は「来ていいから、誘った。」と言う。
それもそうか。と納得した名前は「じゃあ行きたい!」と笑顔を見せた。


付き合って、2度目の研磨の家。
一度目は黒尾を待つべく研磨の家にいた。
部員たちでの集まりの日だった。


バレーで忙しい彼氏、さらにはいつも気だるげな彼氏では、ああしたいこうしたいなんて到底言えるはずもなく、付き合ってもう少しで半年が経とうとしている。


まぁ…私も同じく忙しくてそれ(恋人らしいこと)どころじゃない。


たまにあるオフも、黒尾につぶされ続けてきて現在に至っている。


「なのに…イチャイチャした方がいーんじゃねぇの?なんて言うんですよね。先輩は。」

「だから今日誘ってやったんだろー?」

「…。」


翌日。
研磨の家に訪れた黒尾と名前。

研磨はベッドの傍で相変わらずゲームに夢中。
黒尾は何かの雑誌を読んでいる。
名前はその黒尾に邪魔をする。

こうして、彼らのオフの日はつぶされるのだ。


黒尾をジロッと睨むなり、この人にはもっと気が利くことはできないのだろうか。と思う名前。


…かといって研磨は私よりゲームか…とため息が零れる。

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