赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

噂は知らない


合宿1日目の練習を終え、後片付けをするバレー部員たち。
名前が黙々とボトルを回収している時、


「なぁ、研磨。なんかあったのか?」

「…?」


研磨とリエーフと日向の三人が揃って片付けをする。
日向の突然の問いかけに首を傾げる研磨。
リエーフもそれには興味津々だ。


「なんか、こう…変わったよな!」

「え?」

「男の俺が言うのはおかしいかもしれねぇけど…」


日向がパッと笑顔を見せる。


「なんか、かっこよくなった!雰囲気が!」


その言葉に研磨は少し考えてから、名前の姿を探す。
研磨の様子を見つめる二人は不思議そうに、でも黙ったままその様子を伺うように見つめる。


「名前って、わかる?」

「あの優しい人!音駒のマネージャーやってる人だろ?」

「日向、名前さんと話したことあるのか?」

「話したというか…ボール拾ってもらったんだっ」


リエーフから視線を研磨へ戻した日向に「その名前がおれをここまで変えてくれたんだと思うんだよね。」と話す。


「へぇ〜すげぇなぁ。」と口を大きく開く日向の背後からリエーフが「何てったって研磨さんの彼女でもありますからね。」と話す。


「まぁ、それが一番の理由かもね。」

「えっえっえっ?」


持っていたボールを落とす日向。
一人、パニック状態に陥っている姿を見た研磨が「え?」と固まる。


「待って、研磨の彼女って言った?!」とリエーフに問いかける。
リエーフは「言った。」と頷く。


「…す…」

「「す?」」

「すげぇっ!」


はぁ?と首を傾げるリエーフに対し、研磨は「うるさい。」と一言制止の言葉を放ったが日向の中ではそれどころではない。


「あんなにメールしてんのにそんなこと一言も言ってくんなかったじゃん!知らなかっただろ!!」

「この前の合宿で噂になっただろ?」

「なんて?」

「“音駒のセッターに彼女がいるー”って。」

「知らないよ?俺。」


あれ?と思う研磨。
ということは、もしかして、全員が全員知っているわけではないのかもしれない。と少し希望の光が見えた。

彼にとって周りの視線が痛いのはそのせいだとばかり思っていたからだ。
その視線だと思わなくなれば…知られる前と変わりない気がした。

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