赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

よそ見


そう言えば今日まだあまり話してない気が…と考えながら歩いていた時、


「よそ見してる暇、あるんだ?」


ふっと隣を通った研磨にそう言われ視線を向ける。


「っ…なっ…」

「…。」


何事もなかったかのように、山本と言葉を交わす彼。
名前の脳内はプチパニック状態だ。


待って…何いまの、どういうことですか研磨さん。


訳の分からない言葉の意味を考える名前の背後から黒尾が「名前ーコートから出ろー」と声がかかり、無意識にコートを出た。


あ、デジャヴだ。


午後の初戦は梟谷。
エースの木兎をベンチから見たこの時の位置には覚えがあった。


「セッターの彼女!見とけよー!」

「…。」


止めていただきたい…。


練習試合開始のホイッスルが鳴った。

試合中も、研磨を見れば思い出す。


“よそ見してる暇、あるんだ?”


どういうことなんだろう…?


「よそ見…」


研磨から、フイッと梟谷のエースへ視線を向ける名前。


これがよそ見…。
研磨から…違う人を見ることをよそ見という…なら…?


一人不審な動きをする名前。


「研磨、お前名前に何言った?」


休憩中、彼女の様子が気になったらしい黒尾が研磨に問いかける。
タオルで汗を拭いながら「べつに…」と黒尾から視線を落とす。


「…ちょっと、気にさせただけ。」

「…。」


黒尾は持ったボトルを落としそうになったが、それと同時に口角を上げた。

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