赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

不覚


午後の練習前、研磨とリエーフが練習している端から黒尾が腕を組んでその様子を見つめる。

研磨はリエーフのことを考えていた。


今朝のこと…誰にもバレてないと思ってたけど…
よりにもよって一番バレないと思ってたリエーフにバレるとは…。


ジーッと冷たい視線をリエーフに向ける研磨に気付いたリエーフはきょとんとして研磨を見る。


「…不覚。」

「え?何を深くですか?」


つきたくないため息も、リエーフといれば自然とついてしまう。


その隣のコートでは田中が相変わらずじーっと音駒の部員を見る。


「なーに見てんだ?龍っ」

「ノヤっさん…」


そうだ、仲のいいノヤッさんならしてるんじゃ…と「あのさ。」と聞こうとした時、日向が例の彼女と言葉を交わしている姿を目撃する。


「ひ…日向まで喋ってやがる!」

「あぁ、名前さんな!」

「ノヤぁあっ」

「俺ともなればこれくらい当然だぜ。」


田中は彼女のカレシの話なんてどこへやら、とりあえず彼女と親しくなりたいようだ。
鼻を高くする西谷と項垂れる田中の姿を端から見ていた縁下が冷たい視線を向けていた。


「あ、あのっあり…ありがとうございます!」


ボールを手渡すと名前はふっと笑みを向けた。
日向は、優しい!!とパッと表情を明るくした。

パタパタとコートへ戻っていった日向と逆へ歩いていく名前に声をかけた黒尾。


「名前〜」

「はいっ」


黒尾の傍まで駆け寄った名前の頭をガシッと掴む。


「い…痛いです…黒尾先輩…」

「研磨が変だぞ〜?」

「え?!なんでですかっ」

「さぁ〜気の緩みが出たんでない?名前ちゃん。」


張り付けた笑みを浮かべて、内心楽しんでいるであろう黒尾に引きつる顔を見せる名前。


何か…したっけ?

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