赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

リエーフの観察力


昼食の時間。
リエーフの隣に座る研磨。
さらにその隣には黒尾が座る。

リエーフは今朝の研磨を思い出し、「あの。」と口をもぐもぐと動かしながら声をかける。
それを見た黒尾が尽かさず「飲み込んでから喋れ。」と注意した。

研磨は「なに?」とリエーフに問いかける。
ゴクンと飲み込んだリエーフが研磨の目をジッと見て「研磨さん、何かありました?」と問いかけた。


「?」


べつに、なにもないけど…と言おうとした研磨だったが、その背後から黒尾が「何かあったとしたらお前だろーがリエーフ…」と言う。

あぁ。と思い出した研磨は眉間に皺を寄せた。


「スパイク何本もミスしやがって…お前が決めてたら10点は入ってたぞ。」

「それは大袈裟です!」

「「…。」」


呆れた視線を双方から受けるリエーフは平然とした顔で首を傾げる。
黒尾は「いただきまーす。」と箸を手にする。

その隣で研磨も箸を手にした。


「ねぇ、研磨さん。それで…何かありましたか?」

「…なんで、そう思うの?」


おかずを口に運ぶ研磨。
リエーフはその様子を見て少し自分の自信を無くす。


「…今朝、なんかいつもと違ったんで…」

「…。」


リエーフの言ったことに“今朝”という言葉と“いつもと違った”という言葉があり、研磨の手が止まる。


…実は、観察力すごいとか?


ジーッとおかずを見つめたまま考える研磨を見たリエーフが「け、研磨さん?」と声をかける。
無反応な研磨に瞬きを数回した後、リエーフは顔色を窺うように覗き込んだ。
その瞬間、研磨の腕がピクリと動く。


「別に、何でもないし。」

「!?なんで怒ってるんスか?!」

「リエーフ……黙って食えっ」


黒尾の怒号に食事をしていた他校の部員たちまでもが黙ってしまった。

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