別に
赤いジャージに身を包みなおした研磨。
「…なんで俺まで…」
「名前を誘った時に、そうなることは決まってたんだぞ。研磨。」
ダルそうな研磨を見て、黒尾がニヤニヤと不敵に笑う。
「…名前のせい。」
「えぇっ…ご、ごめん?」
研磨に睨まれた彼女は慌てて、首を傾げながら謝る。
「…名前と帰れるならいいけど。」
「…え。」
名前の横を去り際に呟いた研磨。
彼女は咄嗟に聞き返すも「はい、ボール。」と手にボールを持たされる。
「…け、研磨。」
「…何?」
振り返った研磨に名前は「ありがとう。」と笑みを向ける。
「…別に。」
ふいっとすぐ視線を逸らした彼に、くすくす笑う彼女。
そんな二人を見ていた部員は「なんかズルい。」と口々に呟いた。
自主練習を終え、着替えを終えた部員たちがぞろぞろと帰路につく。
体育館の前で待ち合わせていた研磨と名前、そして黒尾。
「そいや、名前ってどこの駅なんだ?」
「どこだっけ?」
「えぇ…乗り換えしてそこから2駅です。」
「え、じゃあどこ?」
肩を並べて歩く前の二人の姿を後ろから微笑ましく見つめる名前。
黒尾を睨み、「別に知る必要ないでしょ。」と言う。
「あれ…やきもちか?」
「まさか。」
「ほぉん。」
「…。」
眉間に皺を寄せて、黒尾に何かを思いながら歩いているであろう研磨の背に名前が笑いを零す。
振り返った二人。
「…クロのせい。」
「だってお前名前のことなんも話さねぇじゃねぇの。」
「…話したくないし。」
「…ほぉ。離したくないねぇ。」
ニヤニヤする黒尾と、それを見て難しい顔をする研磨。
「何なの?今日。」
「研磨を心配してんだぞ。」
「もういいよ、その話。」
名前は一体何の話?とすっかり二人の話を忘れていた。
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