着替えてこい
研磨の姿を視界に入れた名前の表情がパッと一変した。
「研磨!!」
先ほどまで真剣な顔をしてボールを追っていたくせに、研磨の姿を見て満面の笑みを向ける名前。
研磨もそれにはさすがに恥ずかしくなったらしく軽く手を上げた。
夜久は「ホントお前のこと好きな。」と苦笑いをする。
「…ああいうの。」
「ん?」
「…ズルいと思う、最近は特に。」
「…最近?」
「うん。」と頷く研磨。
「見れば、わかるから。」
「…あぁ、研磨のこと好きだって?」
俯いた研磨は「うん。」と小さく頷くと、思い出したように「あ。」と体育館を見渡す。
「おれ、たぶんジャージ、上脱いで置いたままだと思うんだけど…」
「あ、俺、見たぞ。さっき。取ってきてやるよ。」
「ありがと…」
夜久はジャージを取りに行く際にマネージャーの姿を見た。
…まさか研磨をここまで変えるとはな…。
「すげぇじゃねぇの。マネージャー。」
夜久が研磨のジャージを手にしたとき、黒尾が「名前、お前本当にバレー経験者じゃねぇの?」と言う会話が聞こえてくる。
本人は首を横に振る。
「…名前が運動なんでもできるの、知ってるでしょ。」
そう研磨が言えば、黒尾は「いや〜そうだけどさ。コイツ怖いわ。」と指をさす。
名前はその指を下ろすように掴み「人を指ささないでください。」と睨んだ。
そんな二人を見てため息をつく研磨。
「仲がいいのか?アレ。」
「…どうなんだろう?」
夜久からジャージを受け取った研磨は「じゃ、名前よろしくお願いします。」と呟く。
夜久は目を見開き、咄嗟に研磨の手を掴んだ。
「まてまて。」
「え?」
「研磨がちゃんと送ってやれば?」
「…えぇ。」
面倒くさい、という顔をしている彼に夜久が「そんな彼氏ダメだろ。」と言う。
研磨は視線をあちらこちらへ向けて、最終「…じゃあ、待ってる。」と呟く。
「…よし、じゃあ着替えてこい。」
「…え?」
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