赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

安心した


「じゃあトス上げれてくれ。あ、思ったより跳ぶんで、高くお願いしますね。」

「…はぁーい。」


皮肉っぽく言う黒尾に腹が立つなぁと思う名前。


「…まさかと思いますけど、研磨みたく上手なトス上げれると思ってませんよね?」


黒尾の背に山本の姿もあり、少し疑いをかける。
二人とも首を横に振る。


「いーや?」

「まさかぁ!」

「…ならいいですけど…。」


ボールを手にするなり、“体育でバレーするのって冬だからなぁ…”なんて思う。
さらには、マネージャーになる前、この体育館で一緒に紅白戦に参加させてもらったのを思い出す。


…あれから半年かぁ。


ジーッとボールを見つめていた彼女に黒尾が「おい、名前ー」と名前を呼ぶ。
それにハッとした彼女はボールを黒尾に投げた。


その様子を見ていた夜久の背に声をかけた者がいた。


「夜久くん。」

「おう!研磨。今から帰んのか?」

「うん……何してんのクロたち。」

「ん?」


研磨の視線の先には、コートに立つ名前と黒尾、山本の姿。
夜久は「あぁ。」と笑みを浮かべる。


「苗字に練習誘ったんだよ。そしたら、アイツ毎日体動かしに行ってるだろ?それ聞いた黒尾が“練習付き合え”って。誘って…」


“あぁなった。”とコートを見る夜久。
研磨はその様子を黙って見つめる。


「まだ、ウチ(部活)で練習してる方が安全かも。」

「まぁなぁ…これから日暮れるのも早くなるしな。」

「…ちょっと、心配だったから。」


「安心した。」と柔らかい表情を見せる研磨に、夜久は少々驚いた。


へぇ、こんな顔するようになってたのか。


「彼氏っぽいなぁ〜」

「…彼氏なんだけど。」

「お?」


ますます珍しい研磨の言葉に夜久は表情が緩んでいくのを自分で感じていた。


「…名前は、相変わらず、器用だね。」

「…そうだな。」


綺麗に上げるトスを見て、そう呟いた研磨と夜久。

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