赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

何する気なんだよ


無言で視線だけを主張者、山本へ移す部員たち。
しかし、黒尾と夜久、海の3年生がふっと微笑した。


「却下。」

「俺も。」

「えっなんでっすか?」


まだ“いい案”を発表していないにも関わらず、黒尾さんと夜久さんに即却下されてしまう山本とは、一体…と後輩部員に加え、名前たちが見る。


山本はガーン…という効果音が聞こえてきそうなほどに落ち込んでおり、その隣では芝山と犬岡が慰めている。

リエーフただ一人が疑問を黒尾たちにぶつけた。



「名前は、去年の俺たちの出し物覚えてるか?」



不意に黒尾に問いかけられた名前は、「え。」と戸惑い気味に少し考えるがあまりこれといった印象はない。



「自分たちのしたことは覚えてますけど…出し物までは覚えてませんね…。」

「去年、俺たちは舞台でダンスをした。そうだったよな?山本。」

「…はい。」



相変わらず落ち込みながらゆっくり立ち上がった山本。

黒尾がふっと笑うと、腰に手を当てた。



「しかしだ。今年は去年の俺たちとは違う。そうだな?山本。」

「そうっす!!なんてったってマネージャーがいるんですから!」



その堂々たる姿に部員たちが「おぉ。」と声を上げた。

黒尾がニヤリと笑うと、マネージャーの名前に視線が向けられる。



「ということで、だ。名前。」

「え、はい?」



今度は、ニコリと笑ってみせる黒尾に研磨が眉間に皺を寄せた。



「今年は君には頑張ってもらうぜ。」

「…何する気なんだよ。」



隣で黒尾の顔を見て「気持ち悪いなぁ」と思っていた夜久が顔を少し引き攣らせながら聞く。



「山本、そのいい案とやらは…何だ?」

「はっ、はい!!」



山本の顔が一気に明るくなる。
部員たちがその表情を見て「まさか…」と心の中で思った直後だった。



「“喫茶”です!!」

「「喫茶?」」



部員たちは、“メイド喫茶”と言うと思っていた。
しかし、ただの“喫茶”と言った山本に隠された意味とはなんだ、とみなが考える。



「そんな考えんなよ。メイド喫茶にすればお前らもメイド服着なくちゃいけなくなるんだぞ。」

「うぇ…ありえねぇ。」



黒尾のみんなの心を読んだかのような言葉を聞き、夜久が想像して嫌な顔をする。



「あぁ!わかりました!喫茶なら、俺たちは普通のウエイターの恰好でいいわけですね!」

「さすが芝山。」



黒尾の傍にいたためか頭を撫でられる芝山の様子を見ながら、研磨が何とも言えない表情をして口を開いた。



「つまり、名前にはメイド服を着せようって話…?」

「え…?」

「さすが、研磨。」

「…えぇ?!」



研磨を見て…ご名答とでもいうように不敵な笑みを浮かべる黒尾を見た名前は、顔を思いっきり引き攣らせていた。



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