余計なお世話
文化祭で、バレー部の底力を見せつけた部員たちは今日はいつも通り練習を行う。
休憩時間、何を思ったのか黒尾が研磨に問いかけた。
「なぁ、お前らって恋人らしいことしてんの?」
涼しくなってきたこの時期、マネージャーの名前は上にジャージを羽織って部員たちの姿を見守る。
黒尾はそんな名前の姿を見てニヤニヤする。
しかし、研磨はといえば「…余計なお世話。」とだけ言ってそれ以上何も教えてはくれない。
「だっ…」
「それ以上言ったらバレーやめる。」
さすがにそれは困るな、と何も言えなくなった黒尾は
「ということで名前ちゃん。」
研磨に教えてもらえないのなら、彼女に聞くのみと、名前に直接話を聞いた。
名前は顔色一つ変えず、
「黒尾先輩は、どう見ますか?」
と研磨の姿を見つめながら問いかける。
「ん?」
「私たち。」
ちらっと視線を黒尾へ戻す名前の目の色は、真剣そのもので、黒尾も真面目な顔をして答える。
「もっとイチャイチャした方がいーんじゃねぇの?」
その言葉に返すように、背後の奥の方から「ほんと余計なお世話。」と研磨が睨んでいる。
「だって研磨だって健全な高校生男子だぞ。好きな女目の前にして―…」
「…。」
ボンッと音を立て、黒尾の後頭部を直撃したボール。
名前は笑いに堪えるため口元を両手で押さえる。
「あ…ゴメン。」
「ぜってぇわざとだろ!」
「狙ったよ。ちゃんと。」
不敵に笑う研磨に、背中にゾクリと悪寒が走る。
「それはそれでスゴイデスネ。」
黒尾は悔しそうに練習へ戻っていった。
[ 42 / 88 ]
prev | list | next
しおりを挟む