文化祭午後F
女子に囲まれていた夜久は黒尾に謝罪し、午後の売り上げはさほど伸びなかった結果に終わったものの、部活動内での売り上げはトップで幕を閉じた。
後夜祭の時間になり、部員たちは後夜祭を楽しんでから明日の午前中に片付けを済ませ、午後からはいつも通り練習が始まる。
暗幕の向こう。
控室のそこで、研磨と名前は雑談をしていた。
話しがなくなり、沈黙が続いた時、名前が何となく研磨が夢中になっている手元を覗く。
「ねぇ。」
「ん?」
「…何のゲーム?」
人が真っ暗闇の中を進んでいく画面の中。
「ホラーゲーム。やる?」
首をぶんぶんと左右に振る名前。
「いいっっ」
「…怖がり。」
フッと口角を上げた研磨。
「…怖いのはいや。」
「そういうとこ、可愛いよね。」
研磨は、ただ素直にそう思ったから口にしたであろう言葉だったが、名前にとっては黙らせる一言となった。
「…。」
「あ、ゲームオーバー…っ」
暗いBGMが流れたその直後、研磨の肩を掴む名前。
目を見開いた研磨は「…なに?」と膝立ちをする名前を僅かに見上げ問いかける。
ジッと真剣な目で見つめる名前は「研磨…」と呟いたと同時に彼女が僅かに動いた。
制服じゃない、メイド服のままの名前はスカートの丈を把握していなかった。
裾を踏みズルッとそのまま身を滑らせた名前を研磨の腕が支える。
「…何してんの。」
「ごめん…」
研磨は呆れた顔をし、名前はしゅんと落ち込む。
身を起こした名前の肩に研磨の手が乗った。
目の前が暗くなる。
研磨の前髪が微かに名前の頬に触れた時、目をばっちり開けている名前に研磨は「目、閉じて。」と静かに呟く。
久しぶりのドキドキ感に名前の思考はもうすでに回っていない。
すぐギュッと目を閉じた名前。
唇が触れたのは、その後すぐだった。
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