文化祭午後E
「え…?なんでそうな―…」
「名前が思ってるおれと、実際のおれは、ちがうよ?だから、なんで好きになられたのか、ずっとわからなかったって言ったじゃん…。」
「…。」
「…名前が遠い。」
ぎゅっと、拳に力を入れる名前。
顔を、歪めると、口を開いた。
「…研磨。私、研磨と付き合ってから頑張ってるんだよ。今日もそう。研磨がいなかったら、さっきの人たちに声かけられなかったかもしれない。もうね…研磨が私の支えになってるんだよ。」
その言葉に研磨は振り返ると名前を見た。
「研磨が遠いって言う私は…研磨と付き合ってる私。研磨と付き合ってない私は…研磨とは遠くないのかな…?私は、そっちの方が遠くなると思うよ。」
黙ったまま研磨は視線を今度はゆっくり落とした。
「研磨より、私の方が強いなら、私が研磨の支えになるよ。」
その言葉を聞いて、難しい顔をする研磨。
「…いなくなったらって考えてるんでしょ。」
「!!」
「だから、研磨は強くなれない。性格の問題は置いておいて…私がいるから、頑張れてるってこと、何か作ってほしい。」
視線を上げた研磨の視界に入った彼女の顔は、真っすぐそれでいて凛としていて、とてもカッコよかった。
「私は、研磨が離れていかない限り、離れない。」
「…。」
視線を再び落とした研磨を見て、名前は口角を僅かに上げた。
「フラグだって思ったでしょ。」
「…ううん。」
「?」
首を振る研磨。
視線を上げれば、僅かに微笑む。
「惚れ直した。」
その言葉と視線に、言葉を失う名前。
「たくましい名前に。」
「それ、言わなくていいよ。」
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