赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

文化祭午後@


午前を無事終え、昼食の時間に入る。
午前中で予想外の売り上げを出しているバレー部の喫茶は相変わらず人は絶えない。

そろそろ交代の時間だ、と思った名前の耳に入ったのは何とも陽気な声。


「黒尾ー!まだー?」

「うるせぇ。静かに待ってろ。」


相変わらず一つのテーブルを数時間占領している木兎がダルそうに机に項垂れた。
名前が研磨から聞いた話によれば、黒尾に「可愛いコいるとこ案内しろ!案内してくれるまで帰らねぇからな!」と言えば、それから本当にずっと居座っているとのこと。

赤葦は木兎を放置し一緒に来たという部員たちの元へ。
「黒尾さん、後頼みます。」と言って置いていった(逃げた)。


「…赤葦くんたちと歩いて回った方が可愛い子と会える確率高いと思う。」

「それ、言って来てよ。」


研磨がダルそうに呟く。
黒尾先輩もリエーフも忙しそう…と名前が目に留まったのはリエーフの姿。
可愛い子たちにちやほやされている。


「…リエーフ、イケメンだもんね。」

「問題は中身。」


研磨がそう言った時、入口から頼れる先輩の姿が見えた。


「お疲れー」

「夜久さーん!俺もう無理です。生きてけない。」

「はぁ?何…怖いんだけど…」


山本が夜久の姿を見るなり駆け寄って縋り付く。
教室に入った途端、眉間に皺を寄せる夜久と、その背後には午後当番のメンバーが全員揃っていた。


「うわっリエーフがモテてる!」

「えへへ。」


犬岡が最初に目に入ったのは他校の女子と話しているリエーフの姿だったらしく目を見開く。
リエーフはとても嬉しそうな顔をして満更でもなさそうだ。


「苗字、無事だったみたいだな。」

「無事って…。今朝のカッコいい先輩はどこいったんですか?」


名前の姿を見るなり意地悪な顔をする夜久に、彼女はふいっと視線を逸らした。
その先にいたのは、研磨と黒尾の姿。


「えー…いい。」

「暇だろ?」

「暇じゃない。忙しい。」

「ゲームにな。」

「…。」


着替えてから木兎を案内する黒尾に、研磨がお誘いを受けている様子。
研磨は頑なに首を振る。
その姿を見て頬を緩ませた名前。


「研磨。」

「…。」


名前が研磨を手招きする。
無言でトボトボと彼女に歩み寄れば、「何?」とダルそうに問いかける。


「せっかく当番終わらせたんだし、回ってきたら?」

「…めんどうくさい。」

「文化祭だよ?」

「…でも、名前、大丈夫?」


その言葉に少し驚いたと同時に、頬が緩んだ名前。
彼女の顔を見て研磨は視線を落とした。


「みんないるから、大丈夫だよ。」


視線を落としたまま研磨が「…名前イヤだ。」とボソッと呟いたのが聞こえた。
ギョッとした名前は研磨に食いつく。


「えっなんでっ」

「だって顔に書いてあるし。」

「書いてないよ?何も。」

「…本心は?」

「…。」


そろっと上げられた視線。
金髪の前髪から除く眼から逸らす名前。


「“…可愛いなぁ”。」

「やっぱり…可愛くないし…ってか、可愛いって何。」


眉間に皺を寄せて暗幕に入っていく研磨。
その後を追って入ろうとした名前だが、黒尾に止められた。


「今お着換え中ですよ。お嬢さん。」


苦笑いしている黒尾を見上げ、すぐ視線を落とす名前に「何。」と問いかける。


「…研磨の機嫌、直しててください。」

「は?」


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