赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

文化祭A


昨日は生徒のみの文化祭が行われた。
名前は今日1日中店番なため、昨日文化祭を楽しんだのだが研磨は「店番をする」と言ったので心と結羽と回っていた。

今日も研磨は午前中だけ店番だが恐らく午後も裏にいるつもりだろう。
名前は裏に行けば研磨がいると思えばそれだけで頑張れる気がしたのだ。


「名前はここでそれを言うために…?」

「あ、ううん。いや、研磨に会いたかったんだけど…」

「…誰か待ってる、とか?」


「そう。」と頷く名前を見てふーん、というと「じゃ、おれ、先教室行ってるから。」とだけ言うと目の前の教室へ入っていった。


その背に「あっさりしてるなぁ」と思いながら名前は二人を待っていた。


教室に入ればセットされたカフェらしい雰囲気を纏ったそこが研磨の視界いっぱいに広がった。

「お、はよーございます!研磨さん!」とリエーフのいつも通りの声が聞こえて来てそちらへ視線を向ければみんな勢ぞろいしていた。


「じゃあ名前が着替える前に着替えるぞ。」


黒尾のその言葉でみんなが一斉に動きだした。

午前中の店番は、黒尾、山本、リエーフ、研磨、福永、名前の6人。
昨日は大盛況だったが、きょうは如何に…というところだ。


裏で着替えながら黒尾が「そいや、結局フクロウの奴らが来るって。」っと呟くようにその場にいる者たちに伝える。

リエーフは「マジですか!」とどこか嬉しそうに目を輝かせる。
その顔を見て研磨が「えー」とダルそうに言う。

山本は「奴らってことは、バレー部みんな来るんですか?」と問う。

黒尾は服を綺麗にしながら「どうだろうな…来ても木兎と赤葦くらいじゃねぇかな。」と言う。

山本は「静かにしててくれればそれだけでいいっす。」と遠い目をして言ったが、研磨に「それはできないんじゃない?」と淡い期待を即崩していった。


「けんめぁ〜」

「…うるさい。」

「まだ何も言ってねぇだろ!」

「ほら、うるさいじゃん。」

「てんめぇ〜」


着替えを終えた山本と研磨が裏から表へ出て準備を始める。
黒尾は廊下で待っている名前に伝えるべくドアから顔を覗かせた。

廊下で友達二人と話をしている彼女の姿に声をかける。


「おい、名前。」

「あ、終わりましたか?」


「おう。」と口角を上げる黒尾に名前は少し笑顔を引き攣らせた。


「じゃあ着替えますね。」

「頼みますね。」


作り笑いを向けた黒尾が中へ入っていったのを確認して、名前はため息をついた。
心は「何、なんか不穏な空気になってない?」と問いかけ、結羽は「黒尾先輩かっこいい…!」と目をキラキラさせていた。



教室に入るなり、着替える名前。
着替えを終えた彼女の姿を見た2人は誰もいないそこで声を抑えていた。


「…あんた詐欺だわ。」

「なんなの?何が違うの…」

「そりゃ言っちゃいけない、遺伝だ。」

「そうか。」


「あの…お二人さん。見ないで。」


名前的には似合っていない、と思っていたが周りから見ればそれは違ったようだ。
少なくとも女の子である心と結羽が「可愛い」「可愛すぎる。」と言うのだから似合ってないわけではないことは確実であった。


「はーい、じゃあメイクしようね。」

「バレー部の看板娘にしてあげる。」


「お、お願いします。」


元々顔立ちの良い名前に常にお洒落な二人がメイクを施し、髪を結っていく。
名前が二人に頼んだわけではなく、二人に「メイド服を着る?!」「店番をする?!」と興味を持たれたのが発端だった。

そしてあわよくば名前を餌に他校の男を手に入れようとしている二人の少し淡い期待があった。


「よし、完璧。」

「…名前ちゃんって感じ。」

「なにそれ。」


結羽にメイクをしてもらった後、心が腕を組んで頷くと口角を上げた。


「じゃあ後でまた来るね。」

「お仕事の様子拝見させていただきまーす。」


とだけ言って教室を出る。
「ありがとう。」とお礼を言うと教室に少し姿を見せただけだというのに、廊下でその姿を見た男子生徒が一瞬にして釘付けにされていた。


名前はその視線から逃れるべく扉をすぐさま占めた。


「ちょ、今見た?」

「…うちの生徒?」

「だれだれ?今の。」


「…う…。」


廊下から聞こえてくる声に名前はお腹を押さえた。

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