赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

文化祭


名前は家の自室にて、例のメイド服の試着をしていた。
心と結羽は「早く着てそれ送ってね〜」なんて言い続けられていたが送る気は、ない。

鏡に映った自分の姿を見て表情筋が強張った。


「ゲェ…」


醜いなぁ、と思いすぐ脱ぐとそれを壁に掛けた。


「似合ってないって言われる…かな。」


ちょっと、研磨に可愛いって思ってもらえたらそれだけでいいけど…。


「これはひどい…。」


名前はガクッと項垂れた。




翌朝、長袖ワイシャツの袖を数回捲り、赤のストライプのネクタイを揺らしながら研磨は大きな口を開けて欠伸をしていた。

ゲームの画面を見ながら歩く姿は異様。

目の前に人がいたって頭に目がついているかのように身を除ける。


駅を降りた時、目の前に他校の制服を来たガラの悪そうな人たちが集まっていた。
研磨は知らぬフリをしてその横を通り過ぎた、と思った時。


『音駒の文化祭で彼女ゲットする!』

『まぁ、それ目的で他校行かなきゃ何のために行くって話だよなぁ〜。』


研磨はその言葉を耳にしながら気にすることなく音駒へ向かった。


「あっ研磨!」

「…早かったんだ。」

「うん!」


教室の前で待ってた様子の彼女の姿を見て、少しホッとした研磨。
先ほど駅前にいた人たちに捕まらないか少し心配だった。

しかし、先に来ていた上、いつもと何ら変わりのない笑顔を見せる彼女に無意識に笑みが零れる。


「…あの、きょうさ…」

「?」


言い難そうに言葉を濁す名前の姿に研磨は首を少し傾げる。


「一緒にいてくれる?」

「…え?」


名前は恥ずかしそうに顔を俯かせた。
研磨は彼女の姿を見てこちらも恥ずかしくなるからやめてほしいという気持ちを持ちながら「いい、けど…」と答えた。

その瞬間、ふっと笑う声。


「…。」

「「…。」」


福永がペコリと頭を下げて二人の隣を通っていった。
その背を二人でジッと見つめ、名前が口を開いた。


「…福永くんに鼻で笑われた…。」

「よく、あるから、気にしない方がいいと思うよ。」


そっと研磨が彼女の様子を伺う。
しかし、思っていたのと違った。


「レア!!」

「…あぁ。」


目を輝かせて喜んでいるように見えた。
いや、喜んでいた。


[ 27 / 88 ]
prev | list | next

しおりを挟む