赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

はい、注目。


8月下旬。
各々の教室にて、バレー部全員が欠伸をした。

2年4組の教室では担任の井上が黒板の前から欠伸をする名前の姿を見つける。


『眠いかーバレー部マネージャー。』

「うっ…」


見られていた、と慌てて口元を手で塞いだ彼女をクラスメイトはしっかり見ていた。
笑いが溢れる。

恥ずかしい…、と思いながら前に立つ井上を睨んだ彼女に、井上は『苗字が活躍する時が来たみたいだぞ。』と満面の笑みを向けた。


何のこと?と思った瞬間、黒板に書かれた文字を見て目を輝かせる。


『じゃあ…体育委員。頼むぞー。』


井上が退くと、重い腰を上げてダルそうに体育委員二人が出てくる。


『では、今から…』


今年は何に出ようかな…なんて考えながら名前はわくわくしていた。

一方、隣の2年3組の教室では、窓際のプリンヘッドのバレー部員が黒板に書かれた文字にとてもじゃないほどの嫌な顔をしていた。



『…孤爪くん。大丈夫?』

「…。」



先生の言葉すら耳に入らないほどに、研磨は心情をもろに乱していた。

そして再び、同じ顔をすることになるとはこの時の彼には思いもしなかったことだろう。





『はい、注目。』


「ん?」と部員たちは黒尾の方を向く。

放課後、体育館。
練習を終え、主将から集合がかかった。

そして、その手には紙…それを見て、研磨が手にしていたボールを落とした瞬間その場を去ろうとする。

そこを捕まえたのは黒尾だった。


『おい、逃げるな。名前もこーい。』

「はい!」


ズルズルと研磨を引っ張る黒尾。
委員会を終え、ちょうど体育館へ入ってきたマネージャーの名前も部員たちの元に駆け寄った。


『去年は、2・3年も知っての通り…文化祭、男子バレー部の出し物は、ダンスだった。』

「…すごくヤダ。」

『まだ何も言ってねぇだろー。』


トボトボと研磨が名前の隣へ移る。
名前はその顔を見て顔を引きつらせた。


「そんなに嫌なの?」

「うん……」


名前の方をチラッと見た研磨の視線は、そのままジッと逸らすことなく彼女を見続ける。
名前は「ん?」と問いかけた。
その時、周りの部員たちの視線も名前へ向けられていた。

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